英テレグラフ紙がこのほど、ユーロ圏を離脱すべきはギリシャではなくドイツであると主張する記事を掲載した。

この主張を強く支持しているのが、米プリンストン大学経済学者のアショーカ・モディ氏だ。

EU・ユーロは国家主義の否定

同氏は、ドイツがユーロ圏を離脱して、自国の通貨ドイツ・マルクに戻ることの利点を次のように説明する。

「ドイツが離脱することでユーロの価値が下がり、それは南欧州の輸出業の助けとなる」

「強いドイツ・マルクで、弱いユーロ圏から多くのものを買うことができる」

これらの論点は以前から多くの識者が訴えてきたことだ。しかし、ドイツがユーロ圏を離脱すべき理由は、経済的な理由以外にも存在する。

ヨーロッパは戦後、ナショナリズム(国家主義)を否定するために欧州連合(EU)や共通通貨・ユーロ圏を創り上げてきた。モディ氏によると、「ユーロは、25年前に東西統一を果たしたドイツから牙を抜くためのものだ」とした。ドイツ(及び他のEU諸国)の国家意識を否定することで、「国益」よりもEU全体の利益を優先するようにしたのだ。

しかし、これが失敗だったことは、今回のギリシャ危機を巡って、EU各国がいがみ合っているところを見れば分かる。国家意識というものは、そう簡単に消せるものではなく、また消すべきものでもない。

ドイツは地域の「慈悲深い覇権国」になれる

ヨーロッパを取り巻く経済問題・政治問題を解決するために、モディ氏は、「ユーロの呪縛から自由になることで、ドイツは地域の『慈悲深い覇権国』となることができる」とした。ドイツが、ヨーロッパのリーダー国家として、地域を引っ張っていくことができるということだ。

ヨーロッパはいま、ギリシャのような国が欧州全体を引きずりおろすのか、責任ある大国が全体を引き上げるのかの瀬戸際にある。また、欧州各国で排他的な傾向性を見せる極右や極左の政党が台頭している背景にも、経済的な問題が存在する。

いまこそドイツはヨーロッパに次の繁栄・発展をもたらすことで、戦争の負の遺産を払拭すべきではないだろうか。戦後70年、戦後レジームから脱却すべき国は日本だけではない。(中)

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