新興5カ国(BRICS:ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国)首脳は、ロシア中部ウファで2日間にわたる首脳会議を開催した。ホスト側のロシアは、ギリシャの財政危機でEUを中心とする欧米主導の金融秩序が揺らぐ中、BRICS新開発銀行(NDB)を軸として、新興国の結束をアピールした。

今回のBRICS首脳会議で、途上国のインフラ整備などを目的とした新開発銀行(NDB)が本格始動した。世界銀行や国際通貨基金(IMF)などの欧米中心の金融システムに対抗する機関の一つとなるという。資本金は500億ドル(約6兆1000億円)で、5か国が20%ずつ出資し、将来的には1000億ドルにする見通しだ。本部は中国・上海に置く計画。

ロシアはウクライナ南部のクリミアを武力で併合し、先進七カ国(G7)から経済制裁を受けている。途上国のインフラ金融を囲い込む新開発銀行の役回りは中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)と重なるが、制裁を受けて資金力に乏しいロシアは、新開発銀行を使って政治的な影響力を高める狙いがあるとみられる。

米軍司令官「米国にとってロシア・中国が最大の脅威国」

米軍の参謀本部議長ダンフォード海兵隊司令官は、米国にとって「ロシアが最大の脅威だ」という認識を表明したと10日付のCNNが報じた。核兵器保有国であり、クリミアを武力で編入するなどの行動を問題視している。ダンフォード氏は2番目に中国、3番目に北朝鮮を挙げ、その次にイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」を位置づけた。

孤立を深めるロシアは中国と蜜月関係に

一方、2015年5月の対独戦勝70周年記念式典は、ロシアの孤立を浮き彫りにした。ロシアは60カ国以上の首脳を招待したが、ウクライナ問題を背景に欧米の首脳らは軒並み欠席。結果は約20カ国の出席にとどまった。プーチン大統領は、参加した中国・習近平国家主席を歓待し、「今や露中関係は前例のない高い水準に達した」と、中露両国の蜜月ぶりを称賛した。

アメリカはウクライナ問題にこだわるあまり、中露の接近という、さらなる大きな問題に対処できていないのではないか。ロシアと中国の関係が今以上に深くなることは、欧米諸国や日本にとって脅威になる。逆に、軍事拡張を推し進める中国が恐れるのは、日本、アメリカ、ロシア、インドなどが連携して中国を抑え込む力となることだ。

2012年9月号の本誌の記事で、大川隆法・幸福の科学総裁は、日露関係の戦略について次のように述べている。

やはりロシアは取り込まないと駄目です。ロシアを敵側に回して、ロシア・北朝鮮・中国が結ばれていくと、今の自衛隊ではどう考えても、もう無理です。シベリア地区の経済開発や、エネルギー開発等を通して、もっと友好的な関係をつくること。(中略) そして、中国を西側と同じ価値観のほうに近づけていくということが、基本戦略だと思います

日本政府はプーチン大統領の年内訪日に向けた環境整備を行っている。日米同盟を維持しながらも、ロシアと戦略的な安全保障や経済協力の関係を築き、ともに最大の脅威国である中国をけん制する外交を展開する必要があるだろう。(真)

【関連記事】

2015年3月15日付本欄 加速する「金融の兵器化」 経済政策は安全保障の一部

http://the-liberty.com/article.php?item_id=9332

2015年4月号記事 ウクライナ問題でロシアを孤立させるな - The Liberty Opinion 1

http://the-liberty.com/article.php?item_id=9231

2014年7月号記事 プーチンの正義

http://the-liberty.com/article.php?item_id=7886