安倍晋三首相が、衆院平和安全法制特別委員会で、安保法制案に関する質疑に臨んだことを29日付各紙が報じた。

安倍首相は、集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」について「今、念頭にあるのは、ホルムズ海峡が機雷で封鎖された際だけだ」と述べた。これは、石油などの物資が運ばれてくる海上輸送路(シーレーン)である、中東のホルムズ海峡が機雷封鎖された場合のみ、日本は武力行使を目的として自衛隊を海外派遣する、という見解を示したことを意味する。

しかし、そのホルムズ海峡を経て、インド洋から日本に物資が運ばれるシーレーンの途中にある南シナ海に機雷が敷設された場合について、安倍首相は「様々な迂回路があるため、自衛隊は南シナ海で機雷掃海をしない」などと答弁した。南シナ海で紛争が起きた場合は、日本への武力攻撃につながる可能性のある「重要影響事態」と認定し、自衛隊は他国軍への燃料補給などの後方支援を行う予定であるという。

これに対し、野党は「この法案は石油を求めて戦争を可能にする法案なのか」とくり返し追及。中谷元防衛相は「国民の命、平和な暮らしを守るための法案だ」と答えるなど、委員会は紛糾した。

野党はここぞとばかりにかみついているが、そもそも責める相手と、守る相手を間違っている。安倍政権を責めて、中国や北朝鮮を守るのでなく、本来、独裁体制の中国や北朝鮮を責め、危機にさらされている日本国民を守る体制を整えるべきだ。

目を転じれば、南シナ海では、中国が人工島の基地化を進めるなど、横暴ぶりが目に余る。これに対し、フィリピンやベトナムなどの東南アジア諸国が危機感を強めている。

フィリピンのガズミン国防相は27日、訪問先のハワイで、アメリカのカーター国防長官と会談。南シナ海のスプラトリー諸島における、中国の岩礁埋め立ての中止を求める方針を確認し、アメリカもこの海域への関与を強める意向を示した。ベトナムもアメリカとの連携を強化するため、最高指導者・グエン共産党書記長が7月、初訪米を予定している。

こうした緊迫した状況が続けば、何かの拍子に、この海域で、中国とフィリピン、ベトナムなどの間で紛争が起こる危険性は高い。

中国は、アジアインフラ投資銀行(AIIB)や鉄道インフラなどを通じて、ユーラシア大陸からヨーロッパ大陸を結ぶ経済網をつくっている最中だが、軍事と経済による支配体制を着々と築いていることに、日本人は気づかなければいけない。

日本を脅かす中国の習近平・国家主席の狙いについては、30日発売の本誌7月号特集記事「2023年習近平が世界を支配する」で紹介している。生産性のない国会中継を観て時間をムダにするよりも、多くのものが得られるはずだ。(泉)

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