大塚家具の「お家騒動」は、株主総会で議決権の61%を得て、創業者の大塚勝久氏の会長退任と、その長女・久美子氏の社長続投が決まった。大塚家を除くと、株主の8割が久美子氏を支持したことになる。

依然として勝久氏が筆頭株主であるため問題の火種が消えたわけではないが、親子の経営権をめぐる争いが一旦決着した。

同社は勝久氏の社長時代、会員制を導入し、従業員が同伴して接客するスタイルで業績を伸ばし、一時期、家具販売業界トップの売上高を誇った。だが現在は、そのスタイルに抵抗を感じる顧客も増え、価格が高いイメージを持たれるなどして、新興勢力のニトリやイケアにシェアを奪われている。

その中で久美子氏は、父親が築き上げた従来のビジネスモデルの再構築を掲げ、高価格・中価格帯の単品買いの顧客や、法人の顧客を取り込む戦略を立てた。単品買いの顧客のニーズに沿うように既存店を改革、未出店地域や専門店の新規出店のほか、百貨店などとの提携販売の強化、ホテルや高齢者住宅、企業などをターゲットとしたBtoB事業の強化といった施策を進め、近年、同社の株価を押し上げた。

久美子氏と勝久氏のどちらの戦略が正しいか否かは、一概に断定できない。どちらにも長所短所があるだろう。だが、外国企業の参入などで激化する競争の中で、企業が生き残っていくためには、常にイノベーションが必要であり、現状維持は「死」を意味する。

今回の騒動の結末は、株主が、従来のビジネスモデルにこだわる勝久氏の"私情"よりも、時代の変化に柔軟に対応しようとする久美子氏の経営戦略を評価したという点で、"市場"の声が優先されたと言えるのかもしれない。

久美子氏はお詫びを込めたセールを検討しているというが、なかなか抜け目がない。これからの信頼回復についても注目していきたい。(泉)

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2015年2月27日付本欄 大塚家具のお家騒動は事業継承の問題

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