チベット仏教の最高指導者であるダライ・ラマ14世は、転生輪廻によって後継者を決めるという制度を、自身の死後から廃止するという考えを以前から示している。これについて、中国の国政助言機関である、人民政治協商会議の民族宗教委員会は、制度の存続・廃止の決定権は中国政府にあると、改めて強調した。産経ニュースがこのほど報じた。

パンチェン・ラマ11世は今も行方不明

チベット仏教では、ダライ・ラマは観音菩薩と信じられており、その後継者は血筋ではなく、生まれ変わりによって選ばれる。ダライ・ラマの死後、前世の記憶を試すことなどによって、次のダライ・ラマ探しが始まる。

また、ダライ・ラマに次ぐ存在で、阿弥陀仏の生まれ変わりと信じられているパンチェン・ラマも同様に転生輪廻によって選ばれる。

しかし、パンチェン・ラマ10世の死後、1995年に後継者として認定されたゲンドゥン・チューキ・ニマ少年が、中国当局によって家族ごと連れ去られ、行方不明になったという過去がある。その後、ニマ少年は公の場に姿を現さず、今も消息は不明だ。その間、中国側は独自にパンチュン・ラマ11世を選んだ。

転生輪廻による後継者選定を廃止するというダライ・ラマの考えの背景には、ニマ少年と同様の事件が起きることや、中国政府によって次の最高指導者が選ばれることを避ける意図があるとされている。

唯物国家中国の矛盾

中国は、このダライ・ラマの意図をくじこうとしているわけだが、その発言には矛盾がある。

中国は唯物論国家であるのに、なぜ、ニマ少年を連れ去り、別の後継者を選んだのか。生まれ変わりを認めないのなら連れ去る必要もないし、パンチェン・ラマを選ぶ必要もないはずだ。

また、宗教の教義に口出ししたり、後継者を選ぶ自由に介入したりすることは、信教の自由の重大な侵害に当たる。

転生輪廻は霊的真実

一方、チベット仏教にも問題はある。そもそも、転生輪廻は「制度」ではなく、宗教的「真実」だ。人間は魂がその本質であり、あの世とこの世の転生輪廻を繰り返して、魂を磨いている存在だ。

チベット仏教は、転生輪廻の思想に基づいて、ダライ・ラマの生まれ変わりを探すわけだが、高度な霊能者でなければ生まれ変わりはそう簡単に分からない。前世の記憶を調査しても、それが生まれ変わりを示しているとは限らない。

また、魂修行という観点からも、前世ですべてが決まってしまうのなら、今世での努力が否定されることになり、才能ある人材を登用するチャンスもなくなる。

今、大川隆法・幸福の科学総裁によって、偉人の過去世が次々と明かされているが、過去世で成功を収めた人物であっても、赤ん坊としてゼロから人生をスタートし、様々な経験を積むことで、魂修行が進み、人格の尊さや価値が出てくる。

こうした観点から考えれば、チベット仏教にはイノベーションが必要だ。もちろん、それ以上に、中国に信教の自由を認めることを求めたい。(冨)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『釈迦の本心』 大川隆法著

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2014年9月11日付本欄 ダライ・ラマが転生輪廻制度を廃止? 正しい霊的知識がチベットを救う

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2012年5月号記事 日本は第二のチベットになる - 中国の「日本解放工作」

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