2015年5月号記事

米保守派の祭典 CPAC report

共和党の「アメリカを取り戻す」戦いが始まった

来年11月に控える米大統領選。民主党からはヒラリー・クリントン前国務長官の出馬が有力視されており、対する共和党も、候補者擁立に向けた動きを本格化させている。大統領候補と目される人物が登壇する、保守派の祭典「CPAC」を訪れ、最新の情勢を探った。

(写真  HIDEKI KIYOTA)

共和党の支持団体である全米保守連合(ACU)が毎年開く保守政治行動会議(CPAC)には、全米から推定1万人が集まる。大統領選の候補者らが演説し、会場の模擬投票は共和党の公認候補選びに影響を与える。

「次は戦時大統領が必要」

演説には、各候補の支持者らが詰めかけて声援を送った。写真はクルーズ上院議員に熱いまなざしを送る聴衆。

メイン・ホールの前の通路は別名「ラジオ回廊」。多数のラジオ局が所狭しと特設スタジオを設けており、要人が演説後に次々と番組に出演していた。

模擬投票に並ぶ列。若い参加者も多く、18歳から25歳の層が、投票数の約半数を占めた。アメリカの保守運動の広がりを感じさせる。

今年のCPACで際立ったのは、「オバマ政権でアメリカが本来のアメリカでなくなってしまった」という危機感だ。 登壇者も、オバマケアや富裕層への増税などの社会主義政策、弱腰外交を盛んに批判していた。

会場の雰囲気を象徴していたのが、前回の予備選で最後まで残ったリック・サントラム元上院議員の演説だ。サントラム氏は、半年前にイスラエルを訪問した際に、ネタニヤフ首相の顧問から「アメリカは戦時大統領を選ぶ必要がある」と耳打ちされたと明かした。

戦時といえば、「イスラム国」との戦いを連想するが、それだけではない。 オバマ氏の「チェンジ」で破壊された「アメリカ」を取り戻すための、「自由のための闘い」という意味合いもある。

ウォールストリート・ジャーナル紙は翌日のコラムで、こう解説している。

「ここでの『戦争』とは何か。それは停滞している経済成長から長期的な財政リスクや負債まで全て、また瓦解していく戦後秩序から中東問題、国内のテロまで全てのこと。今年は論争や不満ではなく、危機感がある」

オバマ氏が目指す福祉国家ではなく、個人の自由や責任を基盤にしたアメリカを「取り戻す」にはどうすべきか。危機感を抱く聴衆を前に、大統領候補者たちは、熱っぽく支持を訴えた。

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