イギリスがこのほど、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に、設立国として参加することを表明したと、欧米各紙が報じている。G7の中では、初めての参加となる。

AIIBの設立は、アジア・太平洋地域の国々への投資を目的として、中国が提案したものだ。これは、欧米主導の国際通貨基金 (IMF) や世界銀行、そして日本主導のアジア開発銀行 (ADB) に対抗するものと見られている。2014年10月には、アジア20カ国とともに北京で創立式が行われた。

イギリスの財務大臣ジョージ・オズボーン氏は、参加にあたり、「AIIBの設立国として参加することは、イギリスとアジアにとって、相互に投資しあって成長する大きな機会となる」と声明を発表した。英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、英政府が中国との経済関係を深めようとしている、と指摘する。

中国が、AIIB内で拒否権を持ち、それを政治的な目的のために利用しようとするのではないかと懸念するアメリカは、同盟国に対して、AIIBに参加しないよう呼びかけていた。今回のイギリスの決断を受けて、アメリカの政府要人は「中国に対して譲歩しすぎる傾向に懸念を抱く」とした(FT)。イギリスほどの主要国が参加したとなると、今後、他の先進国も追随する可能性がある。

もちろん、中国がAIIBを設立したり、イギリスがそれに参加する自由はある。しかし、イギリス側は、経済面だけではなく、もう少し大きな視点で東アジアとAIIBの関係を見るべきではないだろうか。

中国は軍事拡張による覇権拡大を目論んでおり、AIIBも東アジアに影響力を広げる戦略の一環であることは明らかだ。一党独裁による人権侵害を繰り返す中国の覇権が成就すれば、東アジアの国々に多くの不幸をもたらすだろう。

現在、東アジアが頼れるアジアの国は日本しかいない。日本は、さらなる経済発展を遂げ、中国とは違う選択肢を東アジアに提供し、安全保障の面でも周辺国を守ることができる国とならなければならない。

確かに、「国の繁栄」は「経済発展」によって計られることが多いが、この二つは同義語ではない。国の主権や安全保障も国家の繁栄には欠かせないことを、イギリスも、アジアの国々も再認識すべきである。(中)

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