政府が今国会への提出を目指す農業協同組合法(農協法)改革案において、全国農協中央会(JA全中)が持つ地域農協に対する法的な監査・指導権限をなくすとの項目が入ることが分かり、各紙が報道した。今後JA全中は一般社団法人に変わることになる。

全国各地に700ある農協は現在、JA全中による経営状況の監査を受けることが義務付けられている。しかし、監査の際にJA全中の方針による経営指導が行われ、農産物の共同販売や資材の共同購入を強制していると批判されていた。

農協とは本来、中小規模の生産者が助け合って農業を行うためのものだ。しかし、現在はJA全中の方針に強く縛られ、各地域に合わせた努力を行う農協は「異端」とされてしまっている。

例えばJA越前たけふは、上部組織であるJA全農を通さずに、高値で農作物を売る販路を独自に開拓。農業資材についてもメーカーと共同開発し、全農を通すより3割も安くすることができた。結果、農家の所得を上げることに成功したものの、JA全中から総会の案内が届かなくなるなど締め付けられ、孤立したという。

JA全中の介入が減ることで、各農協が、地域に合わせて経営努力をしやすくなる。この点では、規制緩和のために一歩前進したと言えるだろう。また、2013年からは、新しい農協をつくるために、都道府県のJA中央会との協議が必要なくなった。JA全中と異なる方針の農協を作り、地域での競争の原理が働くことも期待できる。

ただ、農業の自由化はまだ遠そうだ。農地の売買は自由化されていないし、株式会社の参入も極めて難しく、新規参入が規制されている。また、OECDの調査によれば、日本の農家の収入に占める補助金の割合は約54%で、ノルウェーに続いて世界第2位だ。参入規制と補助金で守られていることで、日本の農業は活力を失っている。

現在、全国の農協では、本業のはずの農業部門の約8割が赤字だが、保険や銀行など金融部門は9割以上が黒字だ。本業の農業部門の赤字を、副業の金融業でなんとかまかなっているのが現実である。これでは、「適正な利益を出し成長する農業」の実現は遠い。

日本の農業技術は世界トップレベルであり、農協にはノウハウが蓄積されている。この高い技術を活かしきるためにも、農業の世界をもっと開かれたものにする必要がある。自由市場でこそ創意工夫が可能になり、切磋琢磨が行われる。株式会社との連携なども推進する中で、農協の本来の目的に立ち返るべきだろう。(晴)

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