ベネズエラの経済・財政は破綻寸前である。金融市場には、企業や国家が破産したときの「保険」として、Credit Default Swap(CDS)というものが存在するが、このCDS市場によると、ベネズエラがデフォルト(負債不履行)を起こす可能性は97%(13日付)だという。

そんな中、中国が今後10年の間に、ベネズエラに200億ドルの投資をすることで合意したことを、欧米各紙が報じている。

なぜベネズエラの経済状況はここまで悪化し、なぜ中国はそんなベネズエラに投資しようとするのだろうか。

ベネズエラは、故ヒューゴ・シャベズ大統領と、現在のニコラス・マドゥロ大統領の下で、社会主義政策を推し進めてきた。しかし、バラマキ政策で財政は膨れ上がり、2012年には、一年でGDPの17.5%もの赤字を記録した。

また、輸出の約95%と国家財政の約45%を原油輸出に頼っているため、最近の原油価格暴落で、財政は更に圧迫している。その結果、インフレ率は60%を超え、食料・物資不足が深刻化し、スーパーの前には長蛇の列ができている。

一方、中国側は中南米で影響力を高める戦略の一環として、ベネズエラに投資している。これはアメリカの「裏庭」だった地域に入り込むことで、アメリカの覇権を少しずつ弱めることが狙いだ。

また、中国は2007年から、500億ドルものローンをベネズエラに融資しており、ベネズエラはその見返りとして中国に毎日60万バレルの原油を譲渡している。巨大な人口を養うために、中国は中南米やアフリカに進出しており、金にものを言わせて資源を買いあさっている。

もしベネズエラがデフォルトを起こしたら、いままでベネズエラに投資した金が全て無駄になるという経済リスクがある。だからこそ、中国は「不良投資と知りつつ、ベネズエラを支えようとしている」という見解を欧米各紙は報じている。

だが、政治的なリスクも存在する。投資したときに売った恩は、それが実らず、負債だけが残った時、相手国の恨みを買う恐れがあるからだ。中国は、ただ金をばら撒いて資源を買いあさるだけでなく、ベネズエラも豊かになり、中国としても採算が取れる形で、ベネズエラ事業に投資すべきだったのだ。

政治的な影響力と資源欲しさに見境無く投資した結果が、ベネズエラの財政危機と経済低迷に一役買ったと言える。

しかし、結局のところ、今回の危機はベネズエラが自ら呼び込んだものだ。英国の元首相チャーチルは、「社会主義は他人の金が尽きるまでしか続かない」とした。ベネズエラで、国民は政府の金をあてにし、政府は中国の投資をあてにして生きてきたが、その金を基に付加価値を生まなければ、決して長続きはしない。

市場はすでにベネズエラのデフォルトを不可避と見ている。ベネズエラは社会主義の幻想を捨て、自助努力の精神を持ち、自らの手で価値を創造することからやり直すべきではないだろうか。(中)

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