セウォル号沈没時、救助活動をする様子。(画像は、 Republic of Korea Armed Forces /Flickr )

カップ焼きそば「ぺヤング」の販売休止や、タカタ製エアバックの問題など、企業の責任をめぐる問題がクローズアップされている。

そんな中、韓国では今年、セウォル号沈没事件をはじめとする"人災"が相次いだことで、左翼色の強い週刊誌「ハンギョレ21」は、"殺人"を誘発した企業への殺人罪を適用する「企業殺人罪」の導入を求める記事を掲載した(18日付日本語電子版)。

同記事では、「セウォル号事故後、労災死亡事故に焦点を合わせ、企業殺人法を拡大しようという議論が始まった。セウォル号事故は企業が利潤のために、安全責任を放棄した結果だったからである。(中略)企業に対する厳しい処罰が行われない韓国で、企業は『当然』大事故につながりかねないことを知りながらも、コスト削減のために規定を違反し、自分の義務に注意を払わない」と言及。大惨事の教訓は、「企業殺人罪」の導入であるとした。

セウォル号の船長は現在、「殺人罪」などで起訴されているが、さらなる追及のために、「企業殺人罪」の制定が議論されていると言える。

「懲罰的制裁論」は日本にもある

しかし、企業への懲罰的な制裁を科すべきという見方は、日本にとっても対岸の火事ではない。

実際、2005年のJR福知山線脱線事故や福島第一原発事故などをめぐり、左翼的な東京新聞は、「企業殺人罪」ではなく、「組織罰」という名称で、企業を糾弾する論調を展開している。また、ブラック企業批判を展開する日本共産党も、企業犯罪に対する罰則を引き上げる構えを見せている。

確かに、利益を求める企業側が、注意を怠った結果、労災を引き起こしてしまうこともある。だが、基本的に「人殺し」を目的とする会社は存在しない。仮にそれを目的としていたら、それはすでに会社ではない。

注意すべきは、こうした議論の中に、「大企業は悪」とする左翼的な考え方が潜んでいることだ。そうした声に押し切られ、日本ではこれまでにも企業を監督する省庁や法律などが増え、企業活動の自由を縛ってきた。これは、アベノミクスの第3の矢である規制緩和の流れと逆行する動きである。

世論に迎合する法律の制定や司法の判断は、大企業の悪玉論を広め、共産主義国のような「貧しさの平等」につながる。企業バッシングの風潮には、一定の注意が必要だ。(山本慧)

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