「2017年4月に、何が何でも消費税10%に上げる」という自民党の政策を受け入れるか否かを問う衆院選が、いよいよ始まります。日本の消費税率は、イギリスの20%、スウェーデンやアイスランドの25%に比べて低いため、「ヨーロッパを見習え」という声が自民党をはじめ、増税を推進する政党から出ています。

しかし、日本はすでに重税国家であり、この点を海外の人は知りません。税の仕組みをトータルで考える広い視野が必要です。

日本は「3代で資産がなくなる」と言われるほど、相続税が高いのです。相続税とは、亡くなった人の財産を、配偶者や子供などが受け継ぐときに、政府に取られる税金です。数十億円の資産を持っている大富豪でも、本人から子供、子供から孫へと2回相続する間に、家や土地などの様々な財産を政府に奪われて、ともすれば、子孫は先祖から受け継いだ家や土地に住めなくなってしまう危険性があります。

現在の日本の税制では、例えば、ある社長の6億円の資産が、子供2人に相続されるとします。このとき相続税として、子供たちで合わせて約1億8千万円を政府に納めなくてはなりません。6億円の資産の内訳が、5億円の豪邸と1億円の現金だった場合、現金1億円のほかに子供たちが8千万円を現金で用意できなければ、この豪邸の一部(土地や建物など)を物納しなければいけません。

つまり、相続税を払うときに、遺産の現金が足りなければ、土地や建物を失うことになります。それを象徴するのが、美智子皇后の御実家である旧正田家の自宅が、相続税のために物納され、更地にされたことです。

ヨーロッパには築200年前後の石の家が多くあり、人々は代々家を受け継いで、内装を替えて住み続けています。イタリアやスイス、スウェーデンに相続税はありません。イギリスには相続税がありますが、回避策があり、かなりの減額が可能です。そんな国々と日本を一律に比べて、「消費税はまだ安い。もっと上げるべきだ」ということはできません。

子孫に家や土地を遺せないほどの高い相続税は、日本が「世界で最も成功した社会主義国家」と皮肉られるにふさわしい制度と言えるでしょう。国際通貨金(IMF)などの海外の機関が「消費税を上げるべき」と言ってきたとしても、他の税金も比較してトータルで判断すべきです。

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