新しくインドネシア大統領に就任したジョコ・ウィドド氏が、フォーリン・アフェアーズ(日本語版)11月号に、「開放的な新インドネシア」と題したインタビュー記事を寄稿した。

記事の中で、同氏は、「人々に雇用を与え、よりよい生活を提供するためにも経済成長を実現することは極めて重要だ」と、経済を最重要視する姿勢を強調。また、公約に掲げた官僚腐敗の撲滅にも取り組むと回答。

南シナ海の緊張を高める中国を念頭にしたアメリカとの協力関係については、「中国もアメリカもインドネシアの友人」「南シナ海の問題については、われわれは『誠実な仲介者』の役目を果たせると思う」などとした。

インタビューで印象的なのは、「中国は友人」と語ったように、中国への配慮をにじませた部分だ。この発言の裏には、5%台にとどまった同国の経済成長率を高めるために、敵をつくらずに、外国の投資を増やしたい思惑が優先した結果であろう。

経済成長を阻害する要因は、「スカルノ初代大統領が公共投資による民間刺激策として始めた1956年の第1次5カ年計画以来、インドネシアでは補助金が当たり前になっている」(ニューズウィーク9月8日付日本語電子版)とあるように、増加する補助金が財政を圧迫している点だ。とりわけ、ガソリンなどの燃料補助金は、歳出の16%を占めている。その財源の一部をインフラ投資に回すことができれば、経済成長を遂げられると期待されている。

しかし、補助金制度にメスを入れることは、政権の崩壊を招きかねない一大事業であることも事実。アジア通貨危機を受けたスハルト大統領が、補助金の削減を断行した際、大規模な反対デモが数週間行われたために、退陣を余儀なくされた。

軍部や官僚出身ではない非エリートのジョコ大統領は、アメリカのオバマ大統領の経歴と似ていると言われている。両者とも、社会保障の充実を訴えている点も同じだ。もし、ジョコ大統領が、燃料補助金の削減分を社会保障に転用すれば、インドネシアの経済発展は見込めないだろう。

根強い抵抗を受けたとしても、ジョコ大統領は、補助金漬けになったインドネシア国民を変えるために、国民の自立を促すべきだ。オバマ大統領が掲げた「チェンジ」であってはならない。(山本慧)

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