韓国の朴槿惠(パク・クネ)大統領が、厳しい立場に立たされている。

先週、朴大統領が自身の公約に反して、在韓米軍が握っていた「戦時作戦統制権」の韓国軍への移管延期を決めたことに伴い、一部の在韓米軍基地の残留が決定した。これについて野党側は、「残留には国会の同意が必要」と非難。朴大統領は29日の施政方針演説でも、統制権の問題に触れていないと批判された。

政権批判の根拠は、ソウルの龍山米軍基地の平沢(ピョンテク)への移転や、東豆川の米軍210火力旅団などの平沢への集約化などについて、米韓両国が合意していたためだ。特に龍山米軍基地は、約130年前に中国の清国軍が駐屯して以来、日本統治時代には日本軍が、それ以降は米軍が駐留するなど、外国軍の駐留が常態化しており、土地の返還要求が根強く残る。

一方、保守系団体は、龍山米軍基地の残留を求めている。同基地は、約48キロしか離れていない北朝鮮からの砲撃射程圏内に位置する。北朝鮮がソウルを砲撃すれば、米軍基地を巻き込んでしまうため、龍山米軍基地は北朝鮮への「トリップワイア(罠の仕掛け線)」と認識されていた。この基地が南の平沢に移転すれば、「米軍撤退」という誤ったメッセージを北側に送ってしまうと警戒しているわけだ。

在韓米軍は、北朝鮮有事に対処することを最大の使命としているが、財政悪化のあおりを受け、戦力は削減され続けている。そこで、アメリカは、戦時作戦統制権の移管延期を条件に、韓国側に最新鋭戦闘機「F-35」や無人偵察機「グローバルホーク」などの導入を求め、戦力の低下を補うように要求。同時にアメリカは、韓国北部に集中している基地と戦力を、中国に面する西側に集中させる計画を進めている。

つまり、アメリカは中国に備えており、北朝鮮有事の際は、韓国軍が主力となることを求めているのだ。

アメリカの意向に従う韓国に対して、中国は当然、反発。中国軍のある予備役将校は、「中国に脅威となる韓国の決定には反対するほかなく、(ミサイル防衛の)THAADが配置された在韓米軍基地は中国の攻撃対象になる」と、公然と恫喝し始めている(中央日報20日付日本語電子版)。アメリカとの同盟をとるのか、中国を選ぶのかという踏絵を迫られた格好だ。

しかし、こうした状況になったのも、朴大統領が自ら招いたツケであると言わざるを得ない。これ以上、韓国が親中路線を続ければ、日本の存立も危うくなる。中国寄りの姿勢を全面的に見直さないのであれば、朴大統領には退陣してもらうほかない。(山本慧)

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