金鐘(アドミラリティ)地区の道路を占拠する学生ら。

2014年12月号記事

現地ルポ

香港デモはアジアの民主主義を守るための戦い

北京政府によって民主主義が危機にさらされている香港では、9月末から学生らのデモ活動が続いている。10月上旬、政府庁舎付近のデモの現場を訪れた。

香港在住の作家ジェイソン・ングさん。

「君たちはヒーローぶってデモをやっているが、これは法律違反だ。スクールバスが止まって、私の子供も学校に行けずに困っている!」

香港の中心部・金鐘(アドミラリティ)の政府庁舎近く。香港に20年以上暮らしているという白人ビジネスマンがデモ隊のテント前で声を上げると、瞬く間に学生らの人垣ができ、議論は白熱した。

香港での民主化デモは、一晩に数万人が参加するまでに拡大した。しかし、幹線道路の占拠が長引き、バスの運行や商店の営業に支障が出ているとの不満も噴出。経済損失の賠償を求める動きすらある。

そうした中で、学生らは路上で寝泊まりするなどして平和的な訴えを続けており、支援の輪も確実に広がっている。

占拠された道路で、「宿題、タダで教えます」と書いた段ボールを置いて座っていた男性に声をかけた。彼は、香港在住の作家ジェイソン・ングさん(右ページ上写真)。「集まっている人々は、とても紳士的で穏やかです。食料を分け合うといった助け合いの精神には、素晴らしいものがあります」と話した。ングさんは、著作の講演で得たお金を、物資を必要とする学生のために寄付するという。

「北朝鮮式」の選挙を決めた共産党への嫌悪

「雨傘革命」と名付けられた今回の大規模デモの争点は、本当の意味で民主的な選挙が実現するかどうかだ

香港は2017年の行政長官選で、有権者全員が参加する制度を導入する予定だった。だが北京政府は8月、「一人一票」の投票と引き換えに、親中派が占める「指名委員会」が選んだ人物しか立候補できない仕組みにすると発表し、骨抜きを図った。これに反発した学生らが、「真の民主主義の実現」を目指して、デモ活動を始めたのだ。

香港の街頭には、「北韓式普選を変えたい?」という横断幕が掲げられていた。党が選ぶ人物しか出馬できない北朝鮮の議会選と一緒だという皮肉だ。