日立製作所は、核廃棄物の放射能の減衰期間を短縮する次世代原子炉(RBWR)の開発を進めている。この原子炉が実用化されれば、10万年かかる使用済み核燃料の無害化が、300年程度に短くなる。日本経済新聞(電子版)がこのほど報じた。

放射能の減衰期間が長いのは、有害度が極めて高い超ウラン元素(TRU)が使用済み核燃料に含まれているためだ。RBWRがTRUを燃やし尽くし、核廃棄物から取り除くことで、減衰期間は短縮される。これによって使用済み燃料を処理する負荷が少なくなり、処理場の面積は4分の1にすることができるという。

これまでの原発をめぐる論争において、反原発派は、10万年の減衰期間が必要とされる使用済み核燃料をやり玉に挙げてきた。NHKはこの問題を取り上げ、同ニュースに触れた小泉純一郎元首相が、反原発に舵を切った経緯もある。だが、使用済み核燃料問題を解消する原子炉が実用化されれば、反原発の根拠が大きく崩れることになるだろう。

反原発派が高い安全基準を要求したことで、原発の再稼働が遅れに遅れ、やっと鹿児島県の川内原発の再稼働が認められた。再稼働を進める安倍晋三首相も、反原発派の主張に配慮してか、22日に行われたワールド・リーダーズ・フォーラムで、「原子力発電所の安全が100%にならない限り、再稼働を認めない」との趣旨の発言をした。

しかし、本誌・本欄で再三にわたって述べているように、福島第一原発の事故は、地震によってではなく、津波による非常用電源の喪失が原因だ。反原発派は、その論理をすり替え、「原発悪玉論」を主張している。

原発再稼動の是非は、科学的な根拠と共に国益に沿った議論が望まれる。その点、今回の次世代原子炉の技術は画期的なものである。「原発悪玉論」を覆す一助になることを期待する。(山本慧)

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