アメリカ軍はこのほど、イラク・シリアの一部を制圧するイスラム過激派「イスラム国(ISIS)」のシリア内の拠点に対し、空爆を行った。この作戦には、サウジアラビアなどのアラブ諸国5カ国が含まれており、オバマ米大統領は「わが国単独のものではない」と強調。中東諸国の理解を得ているとの印象を広めたいようだ。

平和ボケした日本人には信じられないかも知れないが、シリアへの空爆に対するアメリカの世論は、概して肯定的な意見が多い。以下、その一部を紹介する。

ドブ・ザクヘイム元国防次官は、米誌ナショナル・インタレストで、「封じ込めにより、ISISは壊滅しないだろう。その務めは、地域に住む人々でしか成し遂げられない。だが、封じ込めにより、時間を買うことになるだろう。その時間とは、ISISの支配に抵抗する人々の時間である」(24日付電子版)とし、軍事介入を評価した。

また、米ワシントン・ポスト紙の有名コラムニストであるリチャード・コーエン氏は、「オバマの筋書きのない外交政策」と題する記事の中で、「彼に必要なことは、メッセージとの言行一致であり、とりわけ必要なことは、彼自身が考える想定を見直す意欲だ」(22日付同紙)と述べ、オバマ氏の弱腰外交の見直しを要求した。

また、ワシントン・ポスト紙とABCテレビが今月初旬に共同で行った世論調査では、65%が空爆を支持。これに加え、半分以上が「オバマ氏の判断は慎重すぎる」と答えていた。背景には、ISISにアメリカ人ジャーナリスト2人を殺害されたことで、同組織を許すなという強硬な意見が出たことがある。それによって、軍事介入に乗り気でなかったオバマ氏も重い腰を上げざるを得なかった格好だ。

一方で、冷静な意見も見られる。フランシス・フクヤマ氏と元アフガニスタン大使であるカール・アイケンベリー氏は、連名で英フィナンシャルタイムズ紙に寄稿(24日付)。「(イスラム国を壊滅させると発言した)オバマは約束し過ぎた。アメリカはより実効性を伴う戦略を必要としている」と述べ、アメリカの軍事介入を自制し、友好国に安全保障の負担を分担する「オフショア・バランシング」が持続的な戦略としてふさわしいとしている。

宗教の名をかたったテロリスト集団であるイスラム国を壊滅させるための空爆は、一定の評価ができる。しかし、オバマ氏は8月末に、「我々はまだ戦略を持っていない」と述べ、猛烈なバッシングを受けたばかり。戦略性がなく、ただ世論に迎合するために、空爆を実行したのなら問題だ。不信を払しょくする戦略と強いリーダーシップが求められる。(山本慧)

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