中国の元民主派雑誌編集者で作家の鉄流氏(81)がこのほど、公共秩序騒乱容疑で北京市の公安当局に刑事拘束された。鉄氏は最近、民主化を求める活動家たちの活動を封じ込めてきた、党序列第5位の劉雲山・政治局常務委員を批判する文章を公開するなどしており、今回の拘束は、これに対する「引き締め」と見られている。

天安門事件から25年を迎えている中国だが、80歳を超える高齢の鉄氏の拘束に、中国政府の言論弾圧の厳しさが表れている。

6月には、民主活動家を支援してきた人権派弁護士の唐荊陵氏や、著名な人権派弁護士の浦志強氏が相次いで逮捕された。また、アメリカの人権団体「フリーダムナウ」は8月、刑務所を出所したばかりの元人権派弁護士の高智晟氏の状態を公表。栄養失調で多くの歯が抜け、体重は22.5キロまで落ち、繰り返し拷問を受けた形跡が見られるが、意味不明な言葉をつぶやくだけで、まともな会話ができない状態という。

最近では、9月5日に、拘束された人権派弁護士を支援した程海弁護士に、1年間の業務停止処分を出すかどうかを決める公聴会が北京市内で開かれた。この時にも、程海氏の応援にかけつけた100人近くのうち、数十人の弁護士が公安当局に拘束されている。

言論弾圧は香港にも及んでおり、今夏には、中国政府が、香港での普通選挙の実現を求める要望を拒否し、親中派が多数を占める指名委員会の過半数の推薦を得た人物以外は立候補できないことを決めた。9月2日には、政府主導の選挙改革に抗議した民主派19人が公務執行妨害の疑いで逮捕されている。

中国で多くの人々の「自由」が奪われているわけだが、こうした人権問題に対して、日本政府が中国を批判するというケースは極めて少ない。近年は、中国に対し、アメリカも弱腰になりつつあるが、「内政干渉」という安易な言葉で片付けていいものだろうか。

中国は南京大虐殺や従軍慰安婦など70年近く前の歴史を捏造して、日本叩きを繰り返しているが、日本は、現在、それも現実に行われている中国政府の非人道的な行いを批判すべきだろう。

平和ボケを反省して国防強化することも大事だが、日本は、他国で続く人権問題や独裁体制の間違いについて、もっと声をあげていく必要がある。(遠)

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