NHKは14日、「臨死体験 立花隆 思索ドキュメント 死ぬとき心はどうなるのか」を放送した。20年ほど前、臨死体験について調査したジャーナリストの立花隆氏は、自身のがんの再発を受け、死を身近に感じた。「人の心は脳にあり、死後の世界はない」と信じる立花氏は、「人が死ぬときに心はどうなるのか」について、世界各地を訪れて調査した。

番組では、最新の脳科学を中心に、「臨死体験は脳の一部が見せている」、「死に瀕すると、脳が幸福を感じさせる物質を出すので、臨死体験では多幸感がある」などの"発見"を紹介。

「臨死体験は、誘導尋問に答えるうち、実際にはなかったにも関わらず、実際に体験したかのような記憶が作られる『フォールスメモリー(偽りの記憶)』で説明できる」「『意識』は脳の活動であり、眠ると消えることが分かったから、死後に心は存在しない」など、脳の話に終始した。

立花氏は番組の最後に、「いい夢を見ようという気持ちで人間は死んでいくことができるのではないか、そういう気持ちになった」と発言。「死後の世界を信じなくても死は怖くないことが科学で証明された」と言いたいかのようだ。

番組の最後には、23年前に「死後の世界が存在する証拠はない」と語っていたレイモンド・ムーディ博士も登場した。ムーディ博士はその後、臨死体験を経験し、死後の世界を信じるようになっていた(本誌10月号にも登場。下記リンク参照)。「当時は死後の世界を認めず、他の説明でこじつけようとしました。しかし、それは死後の世界があると明確に言い切れなかったので、認めることから逃げていたのだと思います」とムーディ氏は指摘する。

そもそも、「心は脳にある」というのは仮説に過ぎない。単なる仮説を前提とした調査を繰り返しても「臨死体験は脳の作用である」という結論しか出てこない。臨死体験を経験した赤ん坊が、2歳ごろにその記憶を自ら語り出したという事例も、番組では「親が質問するうちに偽の記憶を作りだした」かのように紹介していたが、「脳」にこだわるために無理やりこじつけている印象は否めない。

また、「死後の世界があるかどうか」の検証はほとんどなされておらず、人の死を多く見つめてきた医療関係者や宗教関係者への聞き取りもなかった。

NHKはこれまでも、宇宙人による誘拐「アブダクション」を脳の錯覚とするなど、あえて超常現象を否定するかのような番組を制作してきた。今回も、死後の世界を否定しようとしてこの番組を作ったのかと勘ぐりたくなる。仮説に過ぎないことを真実と決め付ける態度は科学的とは言えない。NHKには、仮説を謙虚に検証しようとする、真の意味での"科学的"な番組作りを期待したい。(居)

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2014年10月号記事 NHKへの公開質問状 なぜ超常現象を否定したいのですか?

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2013年6月4日付本欄 科学が探究する死後の世界 アメリカの教会は沈黙

http://the-liberty.com/article.php?item_id=6126