2013年12月に閣議決定された「国家安全保障戦略」と「防衛計画の大綱」では、防衛力の強化と離島奪還のための部隊の創設が明記された。それを受ける形で2014年5月に自衛隊は、陸海空統合の離島奪還訓練を実施した。

ただ、離島を外国に取られてから奪還することは困難なため、日本の防衛力を強化して、外国に離島を取られることを未然に防ぐことに重点を置くべきであると既に指摘してきた。

そして今回は、離島防衛が必ずしも軍事的な手段によらない場合に注目したい。

長崎県・対馬は、韓国経済と密接につながり始めている。対馬では、2000年に韓国の釜山―対馬間の国際航路が就航してから、年間1600人程度だった観光客が急増し、16年には2万人を突破。その後高速船が就航すると、韓国人観光客は24年には15万836人に達した。

さらには、土地や民宿、民家などを韓国資本が次々と買収。表向きは日本人が所有しているように見えながらも、実際は韓国人が経営し、日本人が従業員として働いている店も増え始めているという。(2014年1月21日付産経新聞)

韓国人観光客の誘致に成功している事例とも言えるかもしれないが、これを皮切りに対馬が韓国の影響下に入ってしまう可能性も指摘できる。

同じ長崎県の五島市は、対馬をモデルにして、外国人観光客の誘致を目指している。しかし、近年では、大量の中国漁船が日本近海に来ていることが当たり前になっているばかりか、無人島が外国船に占拠されることも懸念されている。そのため、五島市では、同市への自衛隊配備を訴える声も上がっている。(2014年7月24日付産経新聞)

さらには、外国人が日本に長期滞在しやすい環境に変化している。2011年に中国人観光客のビザが緩和された際、これまで15日だった短期滞在ビザの有効期限が3年(1回の滞在期間は90日)に延長され、その期間内であれば何回でも訪日できる数次ビザになった。初回訪問時に沖縄に1泊すれば、翌日からは沖縄以外の県での滞在も可能だという。緩和の目的は沖縄県の観光振興のためと言われているが、一部では不法滞在者の増加を招く恐れがあると懸念されている。

経済的に他国の影響下に組み込まれそうになった事例として、台湾があげられる。台湾では、中国からの経済的な影響力の拡大に歯止めをかけようとする動きが出ている。

中国は軍事力を拡大しているが、その一方で、台湾への経済的な影響力を拡大させることで、台湾を中国の経済的な支配下に置こうとした。それが、2010年に締結された経済協力枠組み協定(ECFA)だ。2014年3月に中国は台湾とサービス貿易協定を締結しようとしたが、台湾に対する中国の影響力の拡大が懸念され、サービス貿易協定に対する反対運動が起きた。

このように、離島への侵攻は必ずしも軍事的な手段によらない可能性もある。その場合を想定して、知らず知らずの間に外国の経済に日本の離島が組み込まれることのないように、注意していく必要があるだろう。(飯)

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