2014年9月号記事

中東レポート

城取良太

(しろとり・りょうた)1977年東京都生まれ。2000年、成蹊大学経済学部卒業後、人材コンサルティング業界2社を経て幸福の科学に奉職。10年にHS政経塾に第1期生として入塾。13年に卒塾し、現職。

Webチャンネル「 中東熱風録 」で中東情報を発信中。

エルドアン政権はトルコ国民を幸福に導くか

8月のトルコ大統領選で最有力候補と目されるのが、現首相のエルドアン氏だ。イスラム主義を掲げる公正発展党(AKP)の中心となり、トルコの構造改革と経済発展を推し進めてきた。一方で、その強権的な手法に反発は少なくない。トルコのイスラム事情について、城取良太がレポートする。

イスタンブールのタクシム広場前で4月下旬、デモ活動に遭遇した。例年この広場では「メーデー」の集会が行われるが、今年は広場の使用が禁じられた。抗議の声を上げるデモ参加者が、私の目の前で警察車両に連行されていった。

トルコではここ1年ほど、強権的なエルドアン政権への抗議活動が頻発している 。AKPの台頭でイスラム主義が強まり、自由が奪われることに対する国民の警戒心も高まっている。実際、イスタンブールの街中で出会った人の8割方が、エルドアン政権に否定的だった。

「エルドアンはイスラムを使って、トルコを自分のものにしようとしている。危険な人物よ」

そう語る私の友人のトルコ人女性(27歳)は、建国の父、アタチュルクを尊敬してやまない。

トルコは初代大統領アタチュルクの下、急速な近代化を遂げた。飲酒の合法化、ターバンの禁止などの徹底した世俗化主義で、一時は、イスラムは忌み嫌われ、「アッラー」の名を口にすることさえ悪とする風潮が生まれた。時代を経るにつれ、 行き過ぎた世俗化は、共産主義の台頭や世俗化を支えた軍の勢力伸張を招いた。その結果、近年のイスラム主義への揺り戻しが起きた