政府開発援助(ODA)大綱の見直しを議論していた有識者懇談会がこのほど、災害援助などの非軍事目的の分野に限り、これまで禁じていた外国軍への支援を認める提言をした。この報告を受けて、安倍内閣は今年中に、11年ぶりとなる新しい大綱を閣議決定する方針だ。

この提言が実現すれば、武器輸出三原則、集団的自衛権の見直しと合わせて、安全保障の強化が一層進む。ただ、案の定、左翼的な朝日新聞は、「支援を受けた相手国の考え次第で、軍事に転用される可能性がある」(27日付)と、懸念の声をあげた。

だが、本来懸念すべきは、今まで3.6兆円規模のODAを投下してきた中国が、日本に軍事挑発をしてきていることだ。1980年から始まった対中ODAは、2000年前後の2000億円規模をピークに減少しているが、現在も、300億円ほどの税金が中国に渡っている。

そもそも、ODAの援助原則には、「軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避する」などの4つの規定が定められているが、中国はその規定すべてに違反している。にもかかわらず、日本が中国を援助し続ける必要性はどこにあるのか。

2000年当時の中国の唐家セン外相は、「中国に対するODAは、戦後賠償に代わる行為である」と語ったが、中国への賠償は、日中共同声明により、すでに解決済みであり、日本がこれ以上の賠償をする義務はない。それでも、現在も対中ODAを続けていることを考えれば、日本が戦後賠償という認識を共有していると言わざるを得ない。このような状態を放置してきた日本政府の対外援助にも問題がある。

巡視船の供与や地雷除去などを認める今回の提言は、国際貢献を強化できる点を考えれば、一定の評価ができる。だが、日本に脅威を与える中国は別として、フィリピンやベトナムなどのような友好国には、軍事目的であっても、支援を拡充させていくべきだ。もちろん、対中ODAをやめるべきであることは言うまでもない。(慧)

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