2014年8月号記事

南シナ海危機

日本はアジアの警察官たれ

東南アジアは「盟主」を求めている


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PART 4

東南アジアに広がる「日本式の海上警備」

東南アジアでは日本への期待の声が高まっているが、日本が中国の脅威に対抗するには課題もある。なぜこれほど日本への信頼が厚いのか、また、今後さらに連携を深めるために日本がすべきことを考える。

東南アジア諸国の日本への信頼の高さは、一朝一夕にでき上がったものではない。

第2次世界大戦で旧日本軍が植民地支配していた欧米の軍隊を追い出し、各国を独立させたことに始まり、近年では、1992~93年に、自衛隊員約1200人をカンボジアにPKOの一環として派遣し、地雷や不発弾の撤去、橋、道路などのインフラ修理に汗を流し、同国の内戦からの復興に大きく貢献した。

昨年は、台風30号(ハイエン)に見舞われたフィリピンに対し、日本は、過去最大の1千人規模の自衛隊派遣を決定した。すると日本の首相官邸のフェイスブック(英語版)に、7万件近くの「いいね!」と、3千件以上のコメントが寄せられた。コメントの大半は、フィリピン人からの感謝の言葉だ。

日本は海上警備の先生役

中東のソマリア海賊対策のために派遣された海上自衛隊は2009年、現地の歓迎を受けた。ソマリア海賊は08年ごろから急増したが、日本を含む国際社会の取組により、発生件数は減少している。写真:毎日新聞社/アフロ

あまり知られていないが、 日本の海上保安庁は、海上警備で東南アジア諸国に貢献している。

2000年からは、海賊対策のため、世界中の船が頻繁に行きかうマラッカ海峡周辺に巡視船や航空機を派遣。07年には、同海峡の沿岸国インドネシアに巡視艇3隻を無償で譲り、同国の海上警備を支えている。

また、同庁は各国の海上保安機関の人材育成にも一役買っている。02年から、フィリピンやマレーシア、インドネシアに専門職員を派遣。海難救助や海の国際ルールなどの教育・指導を行っている。さらに、11年からは、広島県呉市の海上保安大学校で、アジア地域の人材育成プログラムを開設。フィリピン、マレーシア、インドネシア、ベトナムなどから研修生を受け入れている。

その成果か、「ベトナム側の記録映像の撮り方は、日本の海上保安庁と同じ方式だった」と、元日本財団海洋グループ長の山田吉彦氏は雑誌「Voice」の対談で語った。

装備などのハード面でも、人材教育などのソフト面でも、「日本式の海上警備」が東南アジア諸国に浸透している。 日本は海上警備の先生役なのだ。