ロシアのプーチン大統領は24日、サンクトペテルブルクで開かれた経済フォーラムで、ウクライナ問題で日本がロシアに制裁を課したことについて、北方領土問題も交えてコメントした。

プーチン大統領は、「我々は(北方領土)交渉の用意があるだろうかと言えば、ある。しかし、我々は日本が(対露)制裁に加わったと聞いて、驚いた。私がよくわからないのは、(北方領土)問題の交渉も(日本は)中断するつもりなのか、ということだ」と述べたほか、北方領土問題の解決方法は、以前に使った「引き分け」という言葉の意味について「互いの利益を損なわないものでなければならない」とし、「厳しい共同作業の結果によってやっと(解決方法が)生まれる」と日本側に妥協を促した。

北方領土問題については、安倍晋三首相が昨年4月に公式訪露した際、交渉を再開することで合意。今秋にはプーチン大統領の訪日が予定されている。しかし、日本政府は先月29日、ウクライナ問題をめぐる対露制裁として、ロシア政府関係者ら23人への日本入国のビザ発給停止に踏み切った。そのため、現在、プーチン大統領の訪日が実現するかどうかあやぶまれている。

今回のプーチン大統領の発言からは、ウクライナ問題に関する日本の対応が意外だったことと、今後の日本の出方に期待していることが伺える。プーチン大統領は、「日本もロシアもこの問題の解決を本当に必要としている」とも発言している。

現在、ロシアは、中国とこれまで以上に接近している。プーチン大統領は20日に訪中し、長年の懸案だった天然ガスの輸出交渉も決着した。しかし、この背景には、欧米や日本の対露制裁が続いて貿易ができなくなれば、ロシアは中国と接近するしかないという事情がある。

本音では、ロシアは中国を警戒している。近年、人口減少が続くロシアのシベリア地域に移住してくる中国人が増加し続けており、このままではシベリアが中国人や中国資本に“実効支配"されかねないからだ。20日の中露会談で、ロシアの最新鋭戦闘機スホイ35と地対空ミサイルS400の売買契約が署名にいたらなかったことからも、ロシアの中国に対する警戒感が垣間見える。

日本も、中国の脅威にさらされているという意味ではロシアと同じ立場だ。また、中露が結びついて日米と対立すれば、それこそ新たな冷戦のはじまりとなってしまう。

ロシアは日本から制裁を受け、中国との関係を深める中で、それでもプーチン大統領は日本と話し合いを続ける意欲を示した。プーチン大統領の本音を汲み取り、日本に対して発せられた、今後どうするのかという問いかけに、日本は、国際情勢を見極めながら真摯に答えなければならない。欧米追随一辺倒の外交をしていれば日本の平和が守られた時代は、すでに終わっている。(紘)

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