欧州連合(EU)と日本は、経済連携協定(EPA)と同時に、戦略的パートナーシップ(SPA)の締結交渉を進めている。このSPA交渉のなかで、EUは、日本が人権を侵害した場合、日本とのEPAを停止することができる「人権条項」を盛り込むよう日本に対して要求している。一方の日本は、本来、途上国に適用されるべき条項が導入されることに反発している。時事通信(5日付電子版)が報じた。

記事によると、「人権の先進地域」と自認するEUは、これまで発展途上国などに人権向上を含む民主化を要求しており、日本への人権条項の要求も、その一環と見られる。日本への懸念は、存続する死刑制度であり、EUは日本の死刑制度に反対を表明している。日本にとって、死刑制度の是非が経済問題にまで発展することは避けたいところだ。

今回の報道では、死刑制度に注目しているが、これ以上に懸念すべき問題がある。それは、韓国の捏造である従軍慰安婦問題が、EUに飛び火して国際問題化することだ。

過去に起きた人権問題まで問題視するEUは、2007年に「(慰安婦制度は)20世紀の人身売買の最も大きなケースの一つであり、性奴隷制度」との対日非難決議を可決するなど、日本に対する見方は厳しいものがある。韓国がEUに歴史認識問題のロビー活動を仕掛ければ、対日制裁の発動を検討する可能性が高い。日本にとっては、虚構の歴史問題でEUの制裁を受けるなど到底容認できない。

そもそも、死刑制度や従軍慰安婦問題などにEUが口出しすること自体、理解できない。日本と同様に死刑制度があるアメリカや、人権弾圧が日常化している中国には人権条項を要求しないEUの姿勢は、ダブルスタンダードだ。特に中国については、EUにとって最大の貿易相手国であるためか、人権問題への批判に及び腰であるばかりか、中国が敵意を向けている日本を狙い撃ちしている感すらある。

経済的に弱体化しているEUが、人権擁護にこだわるあまりに日本とのEPA締結を断念する可能性は考えづらく、条項を通じて得られるメリットは不透明だ。しかし、条項の導入は、中韓が歴史認識問題で悪用しかねず、日本は国益を損ないかねない条項に反対すべきだ。EUも、経済的な関係を重視して、中国に一方的に利用されないように注意しなければならない。(慧)

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