4月1日から消費税率が、5%から8%に増える。これを控えた3月最後の週末、全国各地のスーパーやデパートなどは、増税前の「駆け込み客」であふれた。だがこれは、「4月以降は、モノの値段が高くなるので買い控える」という消費者心理の裏返しだ。

本欄では、長らく「消費増税反対」を主張してきたので、今回改めて、主張の背景を示したい。

政府の説明では、消費増税の目的は、年金や医療、介護や子育て支援などの社会保障制度を維持・充実させるため。増税によって税収を増やし、その分を福祉目的に使う、というものだ。だがそもそも、毎年1兆円から2兆円ずつ増えていく「社会保障費」を消費増税でまかなおうとすれば、8%や10%では間に合わない。

ある試算では、人口予測に基づき、高齢者1人当たりの社会保障給付費を変えない場合などを想定して消費税に限って上げていくと、2060年時点で消費税率は68.5%になるという。この試算を見ても、政府の社会福祉政策そのものが限界を迎えている。その社会福祉の大きな部分を占めるのが「年金」だ。

しかし年金制度自体が、現役で働く世代の人口が増え続け、彼らのお金で高齢者を支えていくという前提でつくられた仕組みであることを考えれば、この点でも限界だ。1950年代は、年金をもらう高齢者1人を、現役世代10人で支えていたが、1990年には5人、2005年には3人とどんどん減り、2050年には1人になると言われる。これは、「胴上げ型→騎馬戦型→肩車型」という言い方で表現される。

つまり、公的な年金制度は、現時点で破綻することが分かっている「詐欺」であり、「ネズミ講」である。「社会保障制度を維持・充実させるため」に、消費税を引き上げるという論理はそもそも成り立たない。

今後、年金を破綻処理する際には、段階的な措置が必要であり、今まで納めていた金額を「年金国債」として渡すなどの案もある。だがいずれにしても、現在の公的年金の制度は、どこかの時点で、解体・民営化しなければならない。

このように消費増税は、詐欺的な政策を維持するために行われるものであり、政府によって私有財産の没収が強化されるという意味で、日本の「社会主義化」が加速する。政府がいくら「手厚い福祉」をうたっても、国の経済成長が止まって税収が減れば、分配は限られ、国民全体が貧しくなるしかない。その先には、政府のひと握りの人たちの判断に、多くの国民の人生を委ねる、旧ソ連のような「共産主義」が実現する。

やはり今、日本政府が取るべきは、「減税路線」だ。減税によって多くの人々が積極的にお金を使う環境をつくり、景気を良くした上で、その結果としての「税収増」を目指す。国民から「むしり取る」のでなく、自由な経済活動を拡大させた果実として、国民から税金を「いただく」のが筋だ。

また国民も、「大きな政府」に自分の人生を預けてしまうのでなく、「小さな政府」の下で、最低限の支え合いをする中で、勤勉に働き、自助努力の精神で生きることを選ぶべきだ。国民一人ひとりの「自助努力の精神」こそが、国を繁栄させる基礎である。(格)

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2013年12月号記事 「税と社会保障の一体改革」という幻想 (Webバージョン) - 編集長コラム

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2013年10月7日付本欄 【週刊誌注目記事】消費増税と年金カットで「平成の姨捨て山計画」が始まった?

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2012年8月号記事 消費増税 - そもそモグラの前提知識

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