北朝鮮の人権に関する国連調査委員会が17日、北朝鮮の人権弾圧に関する最終報告書を発表した。国民の処刑や強制収容所での拷問、外国人の拉致など被害の実態をまとめ、「これほどの人権侵害がまかり通っている国は、現代では類を見ない」と北朝鮮を断罪。「国際社会は北朝鮮の国民を人道に対する罪から守る責務がある」と強調した。

この調査委は日本の提起で2013年に設置されたもので、日本や韓国、アメリカなどで行った公聴会や脱北者へのインタビューでの300人以上の証言をもとに報告書がまとめられた。

北朝鮮国民への虐殺や拷問の実態は苛烈だ。過去50年で、強制収容所で亡くなった人の数は数十万人にのぼり、90年代に最も多く行われた公開処刑は、2013年の終わりに再び急増したなどと証言された。また、「収容所で出産した母親が生まれたばかりの子供を溺死させるよう命じられた」「外国のDVDを販売した者が銃殺された」といった虐殺・弾圧の証言も数多く得られた。

日本人など外国人拉致についてもその実態が明らかになった。元北朝鮮当局者らは「朝鮮労働党に日本人拉致を専門とする部門があった」「拉致は金正日総書記の命令」と証言したほか、海上や陸上での拉致の手法を説明したという。報告書では「拉致は国家政策」であり、「これまでに20万人以上が拉致された可能性がある」と指摘している。

調査委員会は北朝鮮に対し、政治改革を進めること、人権侵害の事実を認めること、また強制収容所の廃止や拉致被害者の解放を勧告。中国に対して「脱北者の北朝鮮への強制送還をやめるべき」と勧告した。ただ、国連安全保障理事会の常任理事国に中国がいることから、「安保理は北朝鮮の状況を国際刑事裁判所に付託するべき」「人道に対する罪で最も大きな責任があるとみられる人々に対して、制裁を実施すべき」との勧告は実行されない可能性が高い。

北朝鮮の人権弾圧や拉致被害について、国連がその実態を明らかにし、非難したことは大きな意義がある。しかし、追及が必要なのは北朝鮮だけではない。国民を統制下に置き、侵略したチベットやウイグルで苛烈な弾圧や虐殺を行っている中国についても、その人権問題を調査すべきである。

スペインの裁判所ではスペイン国籍を持つチベット人が中国による人権弾圧を訴えたことから、江沢民元首席ら5人に逮捕状を出しており、2月に入ってからはこの5人を国際手配するよう、国際警察機構に捜査を要請している。ただ、中国も加盟する国際警察機構が実際に働く可能性は低い上、対中関係を悪化させたくないスペイン政府が、中国の人権弾圧に取り組む姿勢は消極的だ。

国際社会が北朝鮮や中国の人権弾圧に圧力をかけるためには、まずその実態を明らかにすることが不可欠である。今後、中国に対しても北朝鮮と同様の調査を行うべきであるし、国際社会は中国の民主化・自由化を迫る必要がある。国民を弾圧する国家を許さない、国際秩序の確立が求められる。(晴)

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