NHK新会長の籾井勝人氏が、25日就任会見を行った。会見の場での発言が、一部メディアで波紋を呼んでいる。

尖閣諸島の領土問題について日本の立場を伝えるべきか、と記者から問われた籾井会長は、「日本の明確な領土ですから、これを国民にきちっと理解してもらう必要がある」「国際放送では、領土問題について明確に日本の立場を主張するのは当然のこと」と答えた。

慰安婦問題については、「この問題はどこの国にもあったこと」「(日韓の慰安婦問題は)日韓基本条約で国際的に解決している。それをなぜ蒸し返すのか。おかしい」とした。

こうした発言について朝日新聞は、木宮正史東大大学院教授の「従軍慰安婦問題は解決済みというのは、あくまで日本政府側の見解。韓国政府は未解決という立場だ」というコメントを引いて、公共放送のトップとしての資質に疑問を投げかけている。

毎日新聞は、過去にNHKの経営委員長が国際放送の編集方針について「国益を主張すべき」と発言して問題になったことを挙げ、籾井会長の発言を「政治的中立を疑われかねない不用意な発言」と断罪している。

だが、籾井会長の上記の発言は、至極真っ当だ。日本の放送局が領土問題や外交問題について、日本の国益に適った報道をすることはむしろ当然といえる。

NHKホームページの「よくある質問集」にも、「なぜ国際放送に国から交付金(税金)が出ているのか」との質問に対して、「国際放送は、時事問題や国の重要な政策、国際問題に関する政府の見解などについて正しく外国に伝え、海外に住む日本人に大規模な事件や災害を迅速に伝える役割がある」「これらは国益のためにもなる」との回答がされている。

もちろん「国内放送」でも同じことだ。NHKが行う国会中継や選挙時の政見放送には、少なからぬ税金が投じられているし、NHKの運営は、国民から徴収した受信料によって成り立っている。

受信料は強制でもなく払わなくても罰則制度がないため、「税金」ではなく「国営」放送ではないとの逃げ道を用意しているが、これは実質的な税金だ。自由主義経済の下では、欲しいモノやサービスにお金を払うが、NHKの受信料は、たとえNHKの番組を見たくなくても「放送法」が根拠となって半強制的に徴収できるからだ。ゆえに、国家や国民の利益に反した形で使われることがあってはならない。

そもそも国内メディアが、日本よりも他国の立場に配慮した報道をすること自体がおかしなことだが、実質的な「税金」を使って運営しているNHKは、より一層国益を重視する責任がある。

「報道の自由」や「表現の自由」は保障されるべきだが、自由には「良識」や「責任」が求められることを忘れてはならない。(佳)

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