原発再稼動の見通しが立ちつつある。昨年9月に大飯原発が停止してから「原発ゼロ」が続いてきたが、新規制基準の適性審査を申請していた6原発10基について、審査合格の見通しが立ったという。今春に合格が出れば、電力需要が増加する夏に再稼動できる。

だが、9日に投開票を迎える東京都知事選では、「脱原発」を掲げる候補もいる。元首相の細川護キ氏は、「原発ゼロこそ都知事選の最重要テーマ」とするが、国家の方針としては再稼動を目指しており、これをひっくり返す権限は都知事にはない。

実際、有権者も、「都知事選の最大の争点は何か」との世論調査(毎日新聞社実施)において、「少子高齢化や福祉」が26.8%、「景気と雇用」が23%、「原発・エネルギー問題」が18.5%と、主として経済政策を挙げている。

原発問題が都知事選の争点になりえないのは、経済問題のみならず、国防にも関わる問題だからだ。日本は非核三原則で核兵器の保有・使用を"自主規制"している。しかし、原発に使われる原子力技術は、中国や北朝鮮などの核保有国に対して潜在的な「抑止力」となっている。

また、化石燃料に頼らない発電方法は、中国によるシーレーン封鎖によるエネルギー危機を回避することにもつながる。火力発電の燃料である石油は、中東から東・南シナ海を通って輸送される。石油タンカーが通る周辺海域を中国の潜水艦に封鎖されてしまえば、それだけで日本は干上がってしまう。現在は電力会社や関係者の不断の努力によって、かろうじて原発なしでも不自由を感じることなく生活できているが、石油の供給が止まって発電ができなくなれば、暖房も冷房も止まり、あらゆる生産活動は止まり、輸送機関も止まる。

その場合は、シーレーンをコントロール下に置いた中国の属国になるか、戦争して状況を打開するかの二者択一となる。

中国の脅威を一笑に付す人もいるが、現に中国は20日、大型揚陸艦を基幹とした艦隊と潜水艦との連携を伴った演習を東インド洋まで進出して行っている。

東京という世界に誇る都市を率いるリーダーには、国政レベルの見識も求められる。以前、首相を務めた人が、エネルギーと国防の関係を十分に理解できないことは残念だが、「脱原発」をメインに主張する人が、そうした見識を持っているとは言い難い。(悠)

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