2013年は、アメリカのリーダーシップの凋落ぶりが目立った一年となった。9月にはシリアへの軍事介入を議会に求める演説で、オバマ大統領は、アメリカは「世界の警察官」ではないと宣言。アメリカの「例外主義」「特別さ」(Exceptionalim)からの撤退を表明した。

そこではアメリカの大統領として軍事介入に本来不要なはずの「議会の承認」という前例をつくった。これは「イラク戦争疲れ」という国内世論と、毎年1000億ドル(約10兆円)規模での軍事費強制削減を反映してのことだ。

世界に対するアメリカの関与の縮小を示す象徴的な事件となったシリアでは、米ロが化学兵器の廃棄について合意に至った結果、通常兵器であれば政府軍が国民を殺してもいいというメッセージをアサド政権に送ることになった。結果として、今でも民間人の犠牲者は増え続けている。

また10月には債務上限問題を巡る与野党の対立で、2011年11月以来クリントン国務長官が中心に策定したアジアピボット(アジア重視戦略)の目玉となるはずだったAPEC首脳会議をオバマ大統領は欠席。

こうした状況のなか、アジアでは、中朝によるアメリカの覚悟を試すかのような行動が目立った。

中国は11月に東シナ海上空に日本のものと重なる防空識別圏(ADIZ)を設定。来日したバイデン氏は、安倍首相の主張する「撤回」には触れず、日米の対応に温度差があることが露わとなる。

一方、北朝鮮は12月に張成沢氏を粛清。今後は、軍部の発言力が増し、金正恩氏の独裁体制が強化される。ケリー国務長官は、「金正恩氏がいかに冷酷で無思慮であるかを示した」と非難しているが、北朝鮮に対して実効的な制裁を行うことができず、核開発の時間を与えてきたのはアメリカだ。来年4月にオバマ大統領がアジアを歴訪する際に、懸案事項を議題に載せる予定だが、それ以前に「第二次朝鮮戦争勃発」の可能性もささやかれている。

冷戦後いまほど世界が混乱に陥ったことはないだろう。だが、イラク戦争への反省からアメリカは2014年世界への関与からの撤退こそ大義だと傍観者を決め込む可能性がある。国民の半数以上が、アメリカは自国の問題に専念し、諸外国の問題は当事国の裁量にゆだねるべきだと考えている以上、国民の説得は容易ではない。

こうした中、日本は、国家安全保障会議の創設と特定秘密保護法を成立させることができた。だが自衛隊は依然として自国のタンカーさえ攻撃されてからでなければ、防衛することができない状態である。

また12月17日には新防衛大綱が発表され中国や北朝鮮に対する防衛政策を示したが、「どうやって島を取り戻すか」という前提に立っており、占領させないためにどうすべきかという議論が抜け落ちている。

外国の弾道ミサイル発射基地をたたく敵基地攻撃能力の保有も、公明党が慎重なため大綱は検討事項にとどめた。

2014年以降の課題として見送られた集団的自衛権の行使容認は、日米同盟の基軸となるものである。それだけでない。同じく中国の進出の脅威にさらされているアジア諸国の平和を守るものとなる。

フィリピンのロサリオ外相は、昨年の3月、日本の憲法改正ならびに集団的自衛権の行使を支持し、アメリカ、韓国、オーストラリアを含めた相互防衛体制によって、南シナ海で軍事力を誇示する中国への包囲網をつくる構想を明らかにした。

折しも安倍首相の靖国参拝が中国、韓国のみならずアメリカからも「失望」が伝えられている。これは河野談話、村山談話を見直す方針を示していた2012年12月の安倍政権発足当初と同じ構図だ。

河野談話・村山談話によって「日本は悪い国」だと認めている限り、憲法9条の改正はままならないだろう。だが本誌が主張してきたように、日本のアジア進出はアジアの同胞たちを欧米の白人至上主義に基づく植民地主義から解放するための聖戦であった。

2014年は、歴史問題の見直しと共に、集団的自衛権の行使容認と憲法9条の改正を同時に進めてゆくべき年となりそうだ。

これは安倍首相の「積極的平和主義」にかなうものとなるだろう。(華)

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