太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーを普及させるための「固定価格買取制度」を実施しているドイツに対し、EUが非難の声を上げている。昨年から同制度を導入した日本にとっても、教訓となる問題である。

固定価格買取制度とは、風力や太陽光によって発電した電気を市場価格より割高な固定価格で買い取り、普及を促すものだ。その割高な分の費用は、「賦課金」として電気料金に上乗せされる。

EUが問題視したのは、鉄鋼や化学工業など、電気を多く使う企業については、賦課金の割引が行われていることだ。電気料金の上昇でこうした企業の国際競争力が弱くなることを避けるためで、その分は家庭や中小企業が負担する構図になっている。EUは、「特定の企業の電気料金割引は実質的な補助金で、市場競争を歪める」と主張し、違法な補助金ではないかと正式な調査手続きを始める発表をした。

メルケル独首相はEUのこの決定に反発し、「欧州内にドイツよりも産業用電気料金が安い国がある限り、我々が競争を阻害しているというのは理解できない」と話している。ただ、ドイツ国内では2001年と比べ、家庭や一般企業の電気料金は2倍近くになっており、政権への反発は大きくなっている。

しかも、優遇されているはずの大企業も国外脱出を始めている。大手化学メーカーのBASFは、シェールガスによって電気料金が安くなっているアメリカに生産や研究のための投資を増やすと決めているのだ。結局、大企業を優遇しても意味がなく、ドイツ経済はますます壊れていくという悪循環に陥っている。

そもそもこの問題の根源は、ドイツが2022年の原発ゼロを目指し、経済効率の悪い再生可能エネルギーを無理に導入することで、賦課金を上乗せしなくてはならない仕組みを作ったことにある。環境問題を重視するドイツならではの政策だが、原発事故のリスクと国家経済の危機というリスクとを冷静に比較し、考え方を見直すべきである。

ドイツを手本に固定価格買取制度を2012年に導入した日本も、コスト面で課題があるとしてこの制度を見直す方向だ。2013年の時点で3100億円の賦課金は、2020年には8100億円になる見込みで、この分が電気代に上乗せされる。日本の大企業の賦課金優遇は国の補助金で負担されるが、結局は国民の税金によって賄われている。消費税の増税も行われるなか、国民の税負担が増えることは必至だ。

脱原発を進めるドイツの失敗は次第に明確になっている。日本も原発を早期に再稼働し、安価な電力の供給を実現するべきだ。(晴)

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