2014年2月号記事

『忍耐の法』特集

「常識」を逆転せよ!

唯物論者たちの回心.2


contents


ガチンコ対談

千日回峰の大阿闍梨が語る現代人の「救い」とは?

前出の酒井氏のように、天台宗で学んだすべての僧侶があの世を理解できず、迷うというわけではないだろう。同じく千日回峰行を満行している光永覚道・大阿闍梨に、本誌編集長が仏教による現代人への救いと、修行と悟りの関係について話を聞いた。

光永覚道

日本天台宗大阿闍梨

(みつなが・かくどう)山形県出身、鶴岡工業高等専門学校卒。1990年に千日回峰行を満行し、北嶺大行満大阿闍梨となる。2000年より南山坊住職。

綾織次郎

本誌編集長

(あやおり・じろう)鹿児島県出身、一橋大学社会学部卒。大手新聞社を経て、幸福の科学に入局。2010年より現職。

綾織(以下、綾) : 現代人への救いになるような話をできればと思います。光永住職は千日回峰行などさまざまな厳しい修行をされましたが、何か「こういうものをつかんだ」というものをお話いただけますか。

光永(以下、光) : こういうものをつかみました、とはっきりとは……。

: 仏教ですので、「こういうものを捨て去りました」と言うほうがいいかもしれません。

: 捨てるものも別にないです。何をもって捨てた、あるいは得たと言うのか、という問題がありますね。 千日回峰行は積み重ねのなかで千日に達するので、終わった時点で何がどうなるわけではないです。

: その後もずっと修行は続くわけですね。

: 今年9月に亡くなった酒井雄哉・大阿闍梨が千日回峰行の堂入り(注1)という行をしたときに、NHKのカメラがその様子をセンセーショナルな映像で報道して、全国に回峰行が知れ渡りました。昔からの慣いでは975日をもって千日とします。悟りに近づくために修行するのであって、悟り切るために修行するのではないという意味です。

(注1)千日回峰行の700日目を終えた後、明王堂に参籠して9日間、断食・断水・不眠・不臥の状態で不動真言を唱えつづける苦行のこと。

霊的な世界をどう思うか

: 千日回峰行を達成された方には、行中であの世の存在のような不思議なものを見る方もいらっしゃるようですね。

: ないとは言いません。でも、幸福の科学の大川先生は、霊などにはタッチしないでしょう。

: いえ、逆にものすごくタッチしていますね。

: そう言えば、大川先生は最初の頃、啓示を受けたような話ばかりを本に書いてましたね。

: 霊言集ですね。『日蓮の霊言』『空海の霊言』など、たくさんの霊言が出ました。その後20年ほど、大川総裁ご自身としての教義を説き続けましたが、 霊言についてよく知らない新しい信者さんも増えてきたので、4年ほど前から改めて霊言を始めました。 霊的な世界について、住職はどのように考えますか。

: 否定することも肯定することもできません。霊を見せることはできないでしょう。 身内や知人が亡くなった時に、その存在が自分の記憶から消えるんだったら霊は否定できると思いますが、実際はイメージができて、思い出もあるので、それは霊と同義であると考えられます。

: 比叡山の教学では、魂やあの世についてあまり触れないと思いますが。

: いや、恵心僧都・源信という方が遺された『往生要集』から浄土宗と浄土真宗ができていて、「来世はこのような世界になっている。だから現世では何をすべきか」ということを書いています。

: 浄土宗系にはあの世についての教えがある程度あります。

: 天台宗は仏教の総合大学のようなものですからね。顕教、密教、台密、東密、座禅もしますし、戒律もあります。当時流行り始めていた密教の教えも取り入れています。

: 幸福の科学では、天台宗の教義にある一乗思想(注2)は、間違いではないかと指摘しています。

: 初発心してから悟りまでの段階は52段あるのです。

: 鎌倉時代の明恵上人なども悟りの52段階を説いていますけど、それと伝教大師・最澄の一乗思想は違うものですか。

: まったく一緒。天台の教えはすべて含んでいますから。

: でも、さすがに52段を一乗でぽんっと行くのは無理ですよね。

: ただ、初発心イコール悟りですからね。練磨はできていませんけど、発心したら仏の世界に足を踏み入れたのと同じで、悟りの世界には通じていますから。

: 住職が達成された千日回峰は、大変なものであるはずですよね。 発心を起こすのと、一段一段、悟りの階段を登れるかどうかは別問題だと思います。

(注2)人間には仏性があるので、どんな人でも仏になれるという思想。