2014年2月号記事

シリーズ 富、無限 【第7回】

革命を支えたパトロン

縁の下で新時代を創った事業家たち

明治維新や辛亥革命など、時代の大きな転換点で誕生する数多くの英雄とドラマは、多くの人々を魅了し続ける。その中で、今回焦点を当てるのは「資金面で革命を支えた事業家たち」のドラマだ。驚くほど情熱的で無私な彼らの活動が、新しい時代を切り開いた。

(編集部 馬場光太郎)

吉田松陰の「草莽崛起」、つまり「民衆よ、決起せよ」という言葉に象徴されるように、日本の明治維新は、草深い田舎の下級武士たちから始まった。

また、清朝を倒し民主主義国家の樹立を目指した中国の辛亥革命も、農家出身の孫文によって率いられた。

革命とは得てして、権力も財力もない人々が、新しい時代を創るために旧勢力を倒すという形で起きるものだ。だが、こうした活動が一定の勢力となって時代を動かすには、膨大な資金や物資が必要だったはずだ。

ではなぜ、財力のない人々が、大きな仕事を成し得たのか。そこには、彼らの活動を命がけで支えた、「革命のパトロン(注1)」とも言うべき人たちが存在する。彼らは、旧い体制のままでは民衆が苦しみ続け、外国からも侮られて国を失う、という危機感を抱き、革命家たちに無私な支援を続けた。

(注1)パトロンとは、芸術家や政治家などを支援・保護する個人や企業のこと。

明治維新――長州

維新の志士400人を支えた商人

白石正一郎

大村益次郎、木戸孝允、山県有朋、高杉晋作、久坂玄瑞、伊藤博文、西郷隆盛、大久保利通、坂本龍馬、中岡慎太郎……。明治維新と聞けば、多くの人が思い浮かべるであろう維新の志士たち。こうした人々に様々な支援を惜しまなかった人物がいる。下関の商人、白石正一郎だ。

正一郎は、志士たちの活動資金や軍資金を調達しただけでなく、食事や隠れ家を用意するなどして助けた。維新で活躍した志士は、全部合わせても3千人ほどと言われているが、白石家に身を寄せたのは約400人。特に志士の中核メンバーが正一郎の世話になった。

正一郎は1812年、下関の廻船問屋の家に生まれた。長州藩の木綿や塩と、薩摩藩の藍との交易で成功を収め、「下関に白石あり」と京都や大阪にまで名が知れ渡った。

一商人であった正一郎が「革命のパトロン」となったきっかけは、57年に薩摩の西郷隆盛が白石家を訪れたこと。2人は日本のあり方について、昼夜議論をたたかわせた。西郷は国元の家老に宛てた手紙で、「正一郎は全体的に温和な性格で、国学(注2)を好み、正直なので、話していても面白く、一日中話し込んでしまいました」と書いている。

かねてから熱心に国学を学んでいた正一郎は、国を思う西郷の話に強く心を揺さぶられた。そして、革命のために人生を捧げることを決意し、志士たちへの手厚い援助を始める。

(注2)古事記や万葉集などから、日本固有の精神を研究する学問。尊皇攘夷思想にも影響を与えた