コメの収穫量を絞って価格を維持する生産調整(減反)について、政府が見直しの議論を始めている。23日付日経新聞が報じた。

現在、農林水産省が定めているコメの生産目標を自治体に任せるという。都道府県の間で生産枠を融通できる仕組みを活用することで、大規模経営を目指す生産者に生産枠を多く割り当てるためだ。また、戸別所得補償制度で、減反に協力する生産者に支給されている定額の補助金について、金額と支給対象を絞る予定だ。

減反は、日本の農業を停滞させている元凶の一つだ。見直しの確実な実行とともに、減反の廃止を求めたい。

そもそも減反は、食糧管理制度に伴って実行された政策である。食糧管理制度とは、戦後、政府がコメの生産を安定させるため、農家からコメを買い取り、消費者に安く売るという仕組みだ。しかし1960年代、日本人の食生活の変化からコメの消費が落ち込み、政府にコメが余ってしまった。そのため、生産者に減反が要請され、コメの生産量は減少していった。

食糧管理制度は1995年に廃止されたため、政府の在庫調整は不要になっている。それにもかかわらず減反が廃止されていないのは、コメの価格を高くとどめたい農協などから政治家に圧力がかけられているためだ。これまで、民主党や自民党が減反の見直しを検討してきたが、いずれも実行できていない。

しかし、減反は国民に重い負担を強いている。減反を実施している農家には、税金から年間約5000億円の補助金が支給されている。また、コメの価格は適正価格よりも高く設定されており、キャノングローバル戦略研究所の山下一仁氏によれば、消費者の負担は1年で総額5000億~6000億円と推計される。この負担感が、コメの消費量を減らす原因である可能性も高い。

そもそも、日本の農業は新規参入が難しく、安価な作物を自由に大量生産することも難しい。日本の農業は今もなお、国や自治体、農協などの管理下にあり、起業家精神を発揮できない環境にある。農業分野では、今でも「社会主義政策」が続いているのだ。

日本のコメは高価でも、その味と品質のよさから、各国の富裕層を中心に人気がある。安いコメや高付加価値のコメなど、日本の農家が消費者のニーズに合わせて自由に生産できるようになれば、国内消費を増やせる上、国際競争力も十分に出てくるだろう。日本のコメを輸出品へと成長させ、農業の未来を拓くためにも、社会主義政策である減反政策の見直しは着実に進めていくべきだ。(晴)

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