9月末に施行された「いじめ防止対策推進法」を受けて、文部科学省の有識者会議が11日、同法の運用を定める「いじめ防止基本方針」をまとめ、下村博文文科相に提出した。同法で議論の余地がある点について、具体的な対策が取られた。

たとえば、同法では「重大ないじめ」が発生した際に、教育委員会に調査組織を設置するとしているが、「重大」の定義があいまいだった。方針では「重大」な事態について、(1)被害者が自殺を図る、(2)身体や金品に大きな被害を受ける、(3)精神疾患になる、(4)1カ月程度の不登校になる、と規定した。また、学校が重大ないじめと認識しなくても、生徒や保護者の申し立てがあれば調査することとしている。

いじめの調査組織についても、問題が起きてから立ち上げるのではなく、各教育委員会の下に常設すべきであるとした。構成員についても、弁護士や医者など、教育関係者以外で、いじめ当事者と人間関係や利害関係がない専門家を参加させることとしている。

さらに、個人情報の保護を盾に、説明を怠るという事態は避けなければならないと明記。大津のいじめ自殺事件では、「加害生徒にも人権がある」という名目で、市教委がアンケート結果を隠蔽していたことが問題になったからだ。

このように、いじめ防止対策推進法をより具体化し、いじめ被害者の立場に立った条文が制定された点については評価したい。

しかし、学校や各教育委員会の隠蔽について、罰則を伴って禁止してはおらず、いじめが減るかどうかは教育現場にかかっているのが現実だ。同日は、大津いじめ事件で自殺した男子生徒の命日。生徒の父親は大津市役所での記者会見で、「いじめを防止する法律ができても、教育関係者の意識が変わらなければ意味がない」とコメントしている。

いじめと闘う心ある教師がいる一方、いじめの加害者にいじめをやめるよう指導できなかったり、あろうことかいじめに加担したりする教師も存在する。善悪の価値判断が骨抜きになった学校教育の改革も急がなければならない。(晴)

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