東南アジア諸国連合(ASEAN)と日本の首脳会議、ならびにASEANと中国の首脳会議が、9日、ブルネイで行われた。

ASEAN首脳と日本の安倍首相との会議では、南シナ海をめぐる中国とフィリピン、ベトナムなどの領有権争いについて、国際法に基づいた解決を目指すべきとの考えを確認しあった。

安倍首相は、軍事力を背景にした中国の強引な海洋進出を批判しつつ、集団的自衛権の政府解釈見直しや国家安全保障会議(日本版NSC)の創設などの取り組みを紹介したところ、参加国より「日本が世界の平和のために貢献することを支持し、期待する」との声が上がったという。

ASEAN首脳と中国の李克強首相との会議では、李首相が冒頭で経済発展での連携を強調した。中国は、経済面における中国包囲網の性質を持つTPPとは違う枠組みの経済連携や「アジアインフラ銀行」の創設などを提唱して、TPPの切り崩しをはかろうとしている。

一方、安全保障面については、武力ではなく対話で紛争を解決するべきだとし、「南シナ海の紛争をめぐる対話は、当事者間で直接行われるべきだ」と主張した。

この発言は、中国と南沙諸島の領有権をめぐって争っているフィリピンを支援する日米を切り離したいとの思惑が透けて見える。ASEAN諸国は「対話重視」との中国の姿勢には疑念を抱いているが、経済面での魅力は無視できないようだ。

経済連携強化というアメをちらつかせてASEAN諸国を囲い込み、領土問題については二国間の問題にして勢力圏を拡大しようとしている中国の動きは、十分に警戒すべきといえる。

こうした中、当初、東南アジアの訪問を予定していたオバマ大統領は、予算執行停止による政府機関閉鎖の対応に追われ、直前で訪問を取りやめた。

オバマは、シリア問題でも、「アメリカは世界の警察官ではない」との後ろ向きな宣言を行って軍事介入を取りやめ、国民を殺戮しても何とも思わないアサド政権を"野放し"にした。

今回の訪問中止も中国に「アメリカはアジアよりも国内問題を重視する」との誤ったメッセージを与えてしまった。結果、中国はアメリカの居ぬ間にアジアにおける覇権を拡大しようと画策している。

オバマ大統領は、「私に反論されることなく、中国は自らの考えを示せることになる」などと、今頃になって訪問しなかったことを後悔しているようだが時すでに遅しだ。

このようにオバマ大統領は外交における判断ミスを繰り返している。「世界の警察官」が不在のままでは、世界はテロ国家や独裁国家がのさばる無法地帯へと変わっていく。

やはりここは日本がアジアの盟主として立ち上がるしかないし、ASEAN諸国もそれを望んでいる。

日本は同盟国であるアメリカに対しても「ここは重要な局面だから、アジア訪問を断行せよ」と物申し、アジアの安定をリードしなくてはならない。(佳)

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