来年4月から消費税率を引き上げるかどうかについて、政府は26日から6日間連続で、59人の学者、エコノミスト、首長らにヒヤリングし、安倍晋三首相が最終判断をする参考にするという。それに先立って21日付毎日新聞には、黒田東彦日銀総裁がインタビューで「消費税増税を予定通り実施を」との見出しで大きく掲載された。

安倍首相は、現段階では消費税増税を予定通りに実施するともしないとも語っていない。一方で、麻生太郎副総理兼財務相や財務省は「絶対に上げる」という姿勢だ。ここに来て日銀総裁が消費税増税を容認していることは、安倍首相に対して少なからぬ影響を与えることは確かだろう。

しかし、毎日新聞のインタビューをよく見ると、ニュアンスは微妙に異なる。黒田氏はこう語っている。

「消費税増税は、法律に従って政府が経済情勢等を踏まえて判断されるものであり、それ自体については申し上げない」

つまり、消費税増税の時期や税率については、あくまで政府の判断であることを明言している。

そのうえで、

「消費税が予定通り2段階で上がった場合でも、経済が失速することはないし、その中で物価上昇率も徐々に高まっていくと思っている。消費増税要因で経済が失速してマイナス成長になるようなことは考えていない」

と語っている。

どうやら黒田氏は、微妙に言葉を選んで、消費税増税は既定路線であるので、予定通り実施されても、日銀としては経済成長やデフレ脱却できるようにあらゆる手を打っていく、ということを言いたいようだ。

しかし、国債の大量買い取りにより、世の中に出回るお金の量を2年で2倍に増やす「異次元緩和」や、2年で物価上昇率2%という「インフレターゲット」など、「アベノミクス」の第一の矢である金融政策を主導してきた黒田氏にとって、消費税増税は、せっかくの世界的な評価を台無しにする「天敵」のはずだ。

黒田氏の真意が財務省と同じく増税にあるならば、「異次元緩和」は増税のためのアリバイ作りということになり、歴史的に汚点を残すだろう。本心ではなく財務省に対するポーズだとしても、安倍首相が鵜呑みにして消費税増税に踏み切れば、日本経済を失速させ、安倍首相の政治生命を縮める役目を果たすことになるだろう。

本誌・本欄で繰り返し主張してきたように、消費税増税は「アベノミクス」に水をぶっかけ、頓挫させてしまう劇薬だ。アベノミクスの三本の矢をきちんと打っていけば、消費税増税の必要はない。財務省や黒田氏が強調する「(消費税増税を見送れば)国債の信認が失われ、国債金利がはね上がる懸念がある」というのも、日本国債の信用度から見れば、まったく問題ない。

安倍首相は、財務省や日銀の意見に惑わされず、「アベノミクス」を完遂するためにも、消費税増税を見送るべきだ。(仁)

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