総務省がこのほど発表した平成25年版情報通信白書は、製造業が「ビッグデータの活用」をすることで潜在的に4兆8000億円の経済効果が期待できるとしている。ビッグデータの活用とは、多種多量なデータをリアルタイムで分析して、未来予測や異変の察知を行うことだ。

同白書では、顧客に販売した製品に取り付けたセンサーで稼働状況を把握し、アフターサービスに活用する事例を紹介。たとえば故障の予兆を察知することで、故障前に予防のための保守サービスを行うといったものだ。ビッグデータの活用による人件費の節約で、機械製造業の出荷額の15%以上の経済効果が期待できるとの試算もある。

もちろん、データの活用によって業務の効率が良くなることは喜ばしいことだろう。しかし、停滞を続ける日本の製造業が息を吹き返すには、コストダウンだけでは不十分である。高品質の製品をつくり続けるための現場の技術力や開発力を、もう一度重視するべきだ。

ドイツ・ライプツィヒでこのほど開催された「第42回技能五輪国際大会」には、日本から40種目45人が出場し、5種目で金メダルを獲得した。今大会から新しく加わったプラスティック金型の部門で金メダルを獲得したデンソーの高峰征希さん(19歳)は、「これまで支えてくれた方々への感謝の気持ちでいっぱいです。特に、ずっと指導してくれた3人のコーチへの感謝は言葉にできません」とコメントした(9日付日刊工業新聞)。

今回の技能五輪国際大会において、金メダルの数で総合優勝したのは韓国で、日本は4位だった。1960年代には日本は優勝常連国だったが、70年代後半からは韓国の優勝が続くようになった。近年は、日韓が入れ替わり優勝し、競り合っている状況だ。

人件費削減で一時的に利益が上がっても、高い技術を持つ技術者がいなくなれば、魅力的な商品を産み出す開発力が落ちてしまう。厳しい国際競争に勝ち抜くためにも、国や企業は、技術者の育成や活用・登用に、目を向け直す必要があるだろう。(晴)

【参考書籍】

幸福の科学出版 『未来産業のつくり方 公開霊言 豊田佐吉・盛田昭夫』 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=67

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