参院選 各党政策比較 ―投票へ行こう!― Part2

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今回の参院選では、憲法改正の是非が争点に浮上する一方で、アベノミクスや消費税引き上げ、国防の危機への対策など、日本の針路を左右する様々な論点が議論される。それぞれのテーマについて、各党の政策やスタンスを本誌がまとめた。

国防・外交原発・エネルギーTPP・農業

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◆ 国防・外交 ―― 中国や北朝鮮の脅威から日本をいかに守るか

自民党

日米同盟の不断の強化 / 同盟国・友好国との防衛協力を促進 / 自衛隊・海上保安庁の人員・装備を強化 / 国家安全保障会議の設置 / 南シナ海・東シナ海などで、関係諸国と連携しての秩序維持 / 対外的な発信機能の強化 / 普天間飛行場の辺野古移設を推進 / 北朝鮮との拉致問題の完全解決と核・ミサイル問題の早期解決に全力を傾注

国防強化に向けて前向きな姿勢だが、アメリカ依存にとどまり、中国や北朝鮮の国防の脅威を前にして日本の安全を長期的に確保するビジョンを欠いている。日米同盟強化や周辺国との防衛協力強化は評価できるが、アメリカは財政難を背景に「世界の警察官」から撤退していこうとしている。日本が主体的に防衛力強化を図る必要があるが、同党の国防政策は、自衛隊や海上保安庁の人員・装備強化など、米軍を補完する範囲にとどまっている。

公明党

中国、ロシア、韓国などとの定期的な首脳会談 / 日中間の海上連絡メカニズムを構築 / 核兵器禁止条約を提案し、核軍縮を推進 / 飢餓、医療、環境保全など「人間の安全保障」を推進 / 海上保安庁の人員増や、装備の強化・充実

現実の危機として迫っている中国や北朝鮮の国防の脅威に対する認識は皆無に等しい。中国はアメリカを東アジアから追い出そうと覇権主義に出ているのであり、日米の抑止力増強などの対策を打たないままで「日中間の海上連絡メカニズム」などを設けても、中国の脅威を食い止めることはできない。空想に近い「平和」をお題目のように唱える同党は、日本を取り巻く安全保障の状況が見えていないと言える。

民主党

海上保安庁を中心にした警戒監視、警備体制を拡充 / 尖閣諸島など主権に関する日本の立場を積極的に対外発信 / 国家安全保障会議の設置 / 在日米軍再編に関する日米合意を着実に実施 / 東シナ海を「平和、友好、協力の海」とすべく日中間の意思疎通を図る / 北朝鮮との拉致問題解決に全力をあげ、核・ミサイル問題での国際社会との連携

政権時代に外交の迷走で日米同盟を危機に陥れ、中国の軍拡を看過した民主党は、その教訓に立てていない。防衛力の強化は海上保安庁の体制強化にとどまり、自衛隊が正規の軍隊として危機に対処するという、普通の国としてあるべき姿が国防政策から抜け落ちている。東シナ海を「平和、友好、協力の海」とするというビジョンも、中国の覇権主義の現実を直視していない空想論と言える。

みんなの党

対等な同盟関係という立場から、日米地位協定改定を提起し、「思いやり予算」も見直す / 安全保障会議の事務局機能を強化(日本版NSC) / 自衛権の行使の範囲や限界等を法律により明確化 / 防衛力の南西シフトをさらに進める / 広島、長崎で世界軍縮会議を開催

「対等な同盟関係」を志向していながら、中国や北朝鮮といった国防の脅威に対して日米が共同で対処するための国防強化については、策が乏しい。自衛隊の装備や人員の強化は盛り込まれておらず、どのように「防衛力の南西シフト」を進めるのか具体的でない。憲法9条改正や自衛隊の正規軍化について述べない点も不十分だ。

共産党

オスプレイ配備を撤回 / 普天間基地の即時撤去 / 在日米軍基地を全面撤退させ、基地のない平和な日本を目指す / 日米安保条約の廃棄 / 東アジアでの軍縮のイニシアチブ / 「核兵器のない世界」へのイニシアチブ

「軍事にたよらない『平和的安全保障』」という空想論に凝り固まっており、論外。日米安保の破棄と米軍基地の撤廃で平和な日本を目指すとしているが、日米同盟が中国や北朝鮮に対する抑止力として機能し、地域の平和を守ってきたという事実を無視している。日米同盟を破棄するなら、日本はそれだけ独自の防衛力を身に付けなければならないが、それについては一切触れていない。

社民党

「平和基本法」を制定し、憲法の理念に反する自衛隊の実態を、必要最小限の水準に改編・縮小 / 「思いやり予算」を段階的に削減し、日米地位協定は普天間飛行場は県外、国外へ移設 / 「武器輸出三原則」を厳格に守り、法制化 / 集団的自衛権行使を可能とする憲法解釈の変更に強く反対 / オスプレイの普天間飛行場への配備、全国での低空飛行訓練の実施に反対 / 領土問題は長期的な視野で対話を積み重ねる / 北東アジアの非核化と、地域安全保障機構の創設を目指す

戦後日本の平和をつくってきた日米同盟を破壊し、中国や北朝鮮の国防の脅威に対する防衛強化についても考えておらず、論外。北東アジアの非核化と、地域安全保障機構の創設を目指すとしているが、中国や北朝鮮の体制変更を実現しない限り望みは薄く、机上の空論だと言える。社民党路線でいけば、日米同盟が空洞化し、日本が中国や北朝鮮の軍門に下るのは確実になる。

日本維新の会

日米同盟深化のため、ガイドラインや日米地位協定を見直す / 米軍普天間基地の辺野古移設を推進 / 集団的自衛権行使などを定める国家安全保障法制の整備 / 防衛費GDP1%枠の撤廃 / 海上保安庁の警備力強化と自衛隊の海上防衛力の強化 / 領土紛争について国際司法裁判所の活用も含め、国際法に基づく解決 / 価値観を共有する諸国との外交関係を強化 / 慰安婦問題等について歴史的事実を明らかにする

防衛費のGDP1%枠撤廃など国防強化におおむね前向きだが、中国や北朝鮮の脅威に対して現実的に対応できる防衛力が構築できるのか疑問。日米同盟を対等なものにしようとする意図は見えるが、日本が自国の防衛を独自に果たすためにどのような防衛力を構築するかは不透明だ。価値観外交の推進や歴史問題の対外発信は評価できるが、現実的な防衛力の構築がなければ、外交だけでは日本は守れない。

幸福実現党

防衛予算の倍増、ステルス戦闘機の国産化、空母の建造、海兵隊の創設 / 尖閣諸島の実効支配強化 / 日米同盟堅持の下で日本としての核抑止力の保有を検討 / 領海・領空侵犯の排除のため必要な武器使用を可能とする自衛隊法改正 / 武器輸出三原則撤廃と防衛産業へ10年以内に100兆円の投資 / 米軍普天間基地の辺野古移設 / インドとの同盟関係、ロシアとの協商関係の構築を目指す / 国連安保理常任理事会入り / 東京裁判史観の払拭

中国や北朝鮮の脅威を背景に、立党から4年の間に一貫して国防強化を訴えてきた同党は、今回の参院選でも国防強化策を堂々と掲げた。防衛予算の倍増などで自前の防衛装備を大幅に強化すると同時に、長期的に防衛産業を育成するプランも持っている。アメリカが「世界の警察官」から撤退しつつあることを念頭に、核抑止力の保有も検討するとするなど、現実の危機に対する現実的な対応策を打ち出している。東京裁判史観の払拭など、歴史問題解決を明確に打ち出していることも評価できる。

◆ 原発・エネルギー ―― 経済成長の基礎としての安定した電力供給をいかに維持するか

自民党

地元の理解得るよう努力

安全と判断された原発の再稼働について、地元自治体の理解が得られるよう最大限の努力 / 今後3年間、再生可能エネルギーの最大限の導入促進 / 海洋資源の探査・技術開発・利用促進など海洋産業の育成 / 電力システム改革

原発の再稼働に向けて地元自治体の理解を得るよう努めるとして、原発再稼働を進める方針を示唆している。しかし、これまで政権与党として原発を推進してきたにもかかわらず、日本のエネルギー政策における原発の重要性を国民に真摯に説得しようとしていない。「地元の理解」を目指すという玉虫色の表現で逃げるのは、政権与党としての責任感が問われる部分だろう。

公明党

脱原発

可能な限りすみやかに“原発に依存しない社会・原発ゼロ"を目指す / 再生可能エネルギーの実用化に向けた技術開発 / 低炭素技術・ノウハウをパッケージ化して輸出 / 官民・地域ファンドによるCO2削減プロジェクト / メタンハイドレートの商業化

可能な限りすみやかに原発ゼロを目指すと打ち出したが、連立を組む自民党の公約との間にズレが生じている。CO2の排出量が少ない原発を減らしながら、CO2削減を目指すという路線は、現実的とは言えないだろう。エネルギー政策では、再生可能エネルギーや省エネといった論点が中心で、経済成長の基礎となる廉価の電力の安定供給についてキチンと検討した形跡はうかがわれない。

民主党

脱原発

2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入 / 送発電分離など電力システム改革 / 再生可能エネルギーの拡大 / 燃料電池など省エネ技術を飛躍的に普及

2030年代の原発ゼロを目指すという野田佳彦政権時代の目標を引き継いでいる。廉価で安定した電力を供給できる原発から撤退する反面、再生可能エネルギーの拡大をうたっているが、価格面などで本格的な商業化のメドは立っておらず、国の経済成長の基礎となる電力の供給について現実的に考えているとは言えない。

みんなの党

脱原発

2020年代の原発ゼロを国家目標として実現 / 新規の原発設置を禁止。40年廃炉を徹底 / 原発国民投票法を制定 / 電力自由化推進本部を内閣に設置 / 2050年に再生可能エネルギー80% / 2020年までに温室効果ガスの排出量を1990年比で25%削減する国際公約の達成を目指す

成長戦略では減税や規制緩和で企業を応援する立場だが、エネルギー政策はそれとまるで矛盾している。廉価で安定した電力を供給できる原発から撤廃する反面、いまだコスト高で本格的な実用化のメドが立っていない再生可能エネルギーを2050年に発電量の80%にまで高めるという。電力価格の上昇が経済活動を圧迫する上、温室効果ガスの削減目標達成を目指すというのでは、経済成長が損なわれることが予想される。

共産党

脱原発

即時原発ゼロ / 省エネ・節電の徹底 / 再生可能エネルギーの大幅導入

原発の即時ゼロを言っているが、電気料金の高騰で経済が減速するリスクについては無視している。電気料金の値上がりで企業の収益が圧迫されれば、経済政策で掲げている賃上げも難しくなるが、こうした政策の矛盾について目をつぶっている。

社民党

脱原発

原発稼働は一切認めず、原発の新増設はすべて白紙撤回 / 脱原発基本法を制定し、リスクの高い原子炉から順次計画的に廃止 / 電気料金の安易な値上げを認めない / 再生可能エネルギーを促進

原発ゼロを目指す方針で、経済の基盤である廉価な電力の安定供給を軽視している。電気料金の値上げを認めない方針だが、そもそも原発停止が電力会社の収益を圧迫し電力値上げにつながっていることを無視している。またコスト高で本格的な実用化のメドが立っていない再生可能エネルギーを推進する立場だが、日本のエネルギーの将来について現実的に考えていない。

日本維新の会

脱原発

原子力発電は2030年代までにフェードアウト / 送発電分離により自然エネルギーへの移行を勧め、市場価格による脱原発依存を実現 / 再生可能エネルギーの開発推進

再生可能エネルギーの活用によって2030年代までの脱原発を目指す。しかし、再生可能エネルギーは価格面などで本格的な商業化のメドは立っておらず、国の経済成長の基礎となる電力供給について現実的なプランを掲げているとは言えない。経済政策で減税や規制緩和をうたい、企業活動を後押しする構えを見せる一方で、産業発展の基礎となる電力供給については不安が残る。

幸福実現党

再稼働推進

安全性が確認された原発は再稼働 / 使用済み核燃料の全量再処理を進め、核燃料サイクルの確立を目指す / 高速増殖炉の実用化 / 新エネルギーの研究開発や実用化、普及を促進

安定した安い電力の供給を、エネルギー政策の最優先事項として考えている。安全が確認された原発から早期に再稼働するほか、核燃料サイクルの確立など、原子力発電技術の開発を進めることで、さらに効率的な発電システムの構築を目指し、経済政策で掲げる7%成長を支える。潜在的核抑止力として原発を国防面でも位置づけるなど、戦略的な目を持った政策を打ち出している。

◆ TPP・農業 ―― 農業をいかに効率化し世界に売り込むか

自民党

賛成

TPP等の経済連携交渉は、守るべきものは守り、攻めるべきものは攻めることにより、国益にかなう最善の道を追求 / 「農業・農村所得倍増目標10カ年戦略」 / 農地集約を進め、再生利用可能な耕作放棄地のフル活用 / 農業の6次元産業化で、2020年に市場規模を10兆円に拡大 / 農林水産物・食品の輸出額を2020年に1兆円にする

安倍政権はTPPの交渉参加を決断したが、党内の反対派への配慮からアクセルを踏みきれておらず、まどろっこしい表現になっている。農政では、これまで党の票田となってきた農協との関係をないがしろにするわけにはいかず、株式会社の農業参入や農地所有の自由化などでは踏み込み不足が目立つ。

公明党

賛成

TPPは重要品目については関税撤廃から除外、または再協議の対象となるよう政府に求める / TPPと並行して日中韓、日EUなどの経済連携協定を推進 / 「農地中間管理機構」の整備・活用などにより、耕作放棄地の再生利用、農地集約 / 10年間で10兆円規模の6次産業化 / 農林水産物の輸出額を倍増

積極的に経済連携協定を進める姿勢で、貿易の自由化が進む。耕作放棄地の利用や農地集約を進めるとする一方で、株式会社の参入や農地売買の自由化などの規制緩和で農業の効率化を目指す政策は欠いており、農家に対するバラマキ型の補償も盛り込まれている。

民主党

脱退も辞さない

TPPは国益を確保するために、脱退も辞さない厳しい姿勢で臨む / 食料自給率50%を目指す / 農業者戸別所得補償の法制化 / 畜産・酪農所得補償制度の導入検討

「国益」を確保するためにTPP撤退も辞さないとしているが、輸出を拡大して日本の高付加価値の農産品を売り込むといった「国益」は考えていない。農業者戸別所得補償の法制化を掲げており、農家を補助金漬けにして競争力を奪う、バラマキ型の政策しか打ち出せていない。「国益」を守ると言いながら、日本の農業を自然消滅に向かわせる危険な政策と言える。

みんなの党

賛成

TPPのみならず、日中韓FTA、RCEP、日EU等の広域FTAを推進 / 通商交渉を行う上で、外務省・経済産業省・農林水産省をはじめとした関係府省を横断して専門で交渉を行う部署を内閣に立ち上げ / 減反政策の段階的廃止 / 株式会社の農業参入を原則自由化し、農地の所有も認める / 地域農協を脱皮させ、品目別専門農協等の設立を推進

原則として自由貿易を推進する立場で、通商交渉を積極的に進める方針だ。農業については、株式会社の参入や農地問題に切り込むことで、競争力強化が見込める。現在の農協制度にもメスを入れ、自民党も手の付けられない既得権益にまで切り込む。一方で、TPPが通商政策での中国包囲網であるという観点は抜け落ちている。

共産党

反対

TPP交渉参加をただちに撤回することを求める / コメ作について、過去3年の生産コストの平均を基準とし、販売価格との差額を補てんする「不足支払い制度」を創設 / 畑作、畜産、果樹、野菜などでも価格保障と所得補償を拡充

農業への打撃が大きいという立場からTPPに反対だが、その一方で農業を発展させるビジョンは示していない。所得補償などのバラマキ政策は、コストばかりがかかる上に、農家を補助金漬けにして競争力を奪ってしまい、農産物の品質向上にもつながらない。農家の利益を手厚く守ろうとする一方で、安くて美味しい農産物を食べたいという消費者の利益を無視している。

社民党

反対

TPPへの参加に断固反対し、日米並行協議も即時打ち切り / 株式会社の農業参入の全面自由化に反対 / 戸別所得補償制度の法制化・拡充 / 飼料米・稲や米粉生産など水田の多目的利用の推進などで、食料自給率を2020年までに50%以上にする

農林水産業や地域経済に甚大な影響が及ぶとして、TPP参加に反対している。しかし、戸別所得補償など農業の“補助金漬け”を加速させ、むしろ農業の衰退を促す政策だと言える。株式会社の参入に反対するなど、効率化による農業の競争力アップは望めず、食料自給率を高める具体的な方策も乏しい

日本維新の会

賛成

TPPは攻めの交渉で国益を勝ち取る / 農地法改正による企業参入促進 / 減反政策の根本的見直し / 農協の機能の再定義

規制緩和による企業参入などで、農業の競争力強化を目指す路線は評価できる。農協の機能の再定義にまで踏み込んでおり、自民党の手の付けられない既得権益の是非にまで切り込む気配だ。ただし、TPP交渉で勝ち取るべき「国益」が何かは明示していない。

幸福実現党

賛成

TPP参加によって輸出拡大、中国包囲網を築く / 高付加価値産業の育成 / 農業に個人や株式会社が自由に参入できるようにする / 減反廃止と大規模化の推進で競争力を向上

TPP参加に加え、経済政策同様に農業分野でも徹底した自由化路線を進める。減反政策を廃止すると同時に、株式会社などが自由に農業に参入できるようにして、効率化と競争力強化を目指す。日本の質の高い高付加価値の農産物を、海外に積極的に売り込む構えだ。TPPを中国包囲網という、国防政策の一環としてとらえており、戦略的に貿易政策を考えていると言える。

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