オバマ米大統領と習近平・中国国家主席が7日(日本時間8日)、米カリフォルニア州のパームスプリングスで会談を行った。会談後の共同記者会見では、サイバー攻撃や北朝鮮などの問題が議題に上ったことが明らかにされた。だが、同席者を閣僚ら6人に限定し、夕食を含め6時間近くの極めて親密な会談では、明らかにされていない「密約」があったと見るべきだろう。

会談は、8日の2日目のものも含めると、8時間近くにも及んだことになり、「中国の国家主席が就任から3カ月で訪米するのも、米中首脳がこれほど収集的に会談するのもかつてなかったことだ」(9日付読売新聞)。明るい陽射しが降り注ぐリゾート地で、ノーネクタイの両首脳が笑顔を見せながら握手を交わす姿が、全世界に配信されたが、これは習氏が口にした「新しいタイプの大国関係」そのものを象徴している。

米中関係を振り返ると、2002年、当時のブッシュ米大統領が、個人で所有するテキサス州クロフォードの牧場に、江沢民・国家主席を招き、会談やパーティーを開いたことがあった。その際、会談の内容は一切公表されなかったが、奇妙なのは、その後、当時アメリカが手を焼いていたフィリピンの共産ゲリラの活動が、ウソのように収まったことだ。ブッシュ氏と江氏の間で密約が交わされ、中国が共産ゲリラの支援をやめたことによるものと指摘する専門家もいる。

こうした過去を見ても分かるように、同席者を絞って外部に情報がもれないようにした今回の会談でも、密約が交わされたと見るのが自然だろう。実際に、あれだけ強硬な姿勢を見せていた北朝鮮が、米中会談にあわせるかのように韓国に対話を持ちかけ、9日には、1年9カ月ぶりに軍事境界線上にある板門店で実務者協議が開かれた。中国が北朝鮮に言うことをきかせ、南北対話を訪米への手土産としたと見られる。

今回のオバマ・習会談で、どのような密約が交わされたのかは定かではないが、米中の情勢を見れば、財政赤字に苦しむアメリカは、中国に北朝鮮をしっかりと抑え込むことを要求し、アジアでの覇権拡大を目指す中国は、アメリカに日本の安倍政権をしっかりと抑え込むことを要求したという推測が成り立つ。

会談後、習氏は「我々はチャイニーズ・ドリームを実現し、経済繁栄と人民の豊かさを追求したい。アメリカン・ドリームとは(お互いが利益を得る)ウィンウィンの関係だ」(9日付朝日新聞)と語っているが、この「ウィンウィンの関係」は、おそらく日本にとって大きな脅威となるだろう。

また、2007年に訪中した米軍の幹部に対して、中国海軍の幹部が「将来、中国とアメリカで、太平洋を二分する」という太平洋分割案を提示したことは有名だが、今回の会談で習氏は、昨年2月に訪米した際に語った、「広大な太平洋には両国のためのスペースが十分ある」という言葉を改めて繰り返している。

日本が、今後とも日米同盟を堅持すべきなのは言うまでもないが、たとえ、アメリカに見放されたとしても、「自分の国は自分で守る」という当たり前の体制を整えることを急がねばならない。(格)

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2013年7月号本誌記事 日本が歴史問題を乗り越える方法(ウェブ・バージョン) - 編集長コラム

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