参院は5日、「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を妨害する行為の是正等に関する特別措置法」(以下、消費税転嫁法)を可決、成立した。17年3月末までに効力が限定される特別措置法で、2014年4月に行われる予定の消費税増税の時に、増税分を販売価格にきちんと反映させるよう義務化し、増税分の価格への円滑な転嫁を促すことを目的としている。

この法律の制定には、大きく3つの側面がある。

(1)小売店に納入する中小企業の保護

小売業者が納入業者から増税分の値引きを強要し、仕入れ価格を抑えていないかどうか、監視体制を強化する。違反が発見された場合には指導し、さらに悪質な場合は、公正取引委員会が勧告して企業名を公表する。また、中小企業の保護をさらに徹底するために、独占禁止法の規制を一部緩め、中小企業が協議して増税分の価格を一斉に引き上げる「価格カルテル」を部分的に認める。

(2)「消費税還元」セールの禁止

消費税を取らないという誤解を消費者に与えないために、「消費税」と表記した安売り広告・宣伝を禁止する。例えば、「消費税還元セール」や「消費税相当分のポイントを付与」などの広告・宣伝は禁止するが、「3%値下げ」や「春の生活応援セール」などは容認する。

しかし、これらのセールの線引きがあいまいだとの批判が小売業界からあるため、今後消費者庁は、小売業界が増税時の表示に混乱しないように具体例を明示した指針を発表する。

(3)税抜価格の表示が可能に

税込み価格の総額表示の規制を緩和し、店頭での税抜き価格での表示ができるようになる。例えば今までは「105円」と表示する必要があったものを、「100円+税」という表示ができるようになる。ただこれは、17年3月の法律の期限切れ後には税込み価格に再び統一しなくてはならないため、小売店・消費者ともに混乱が生じると指摘されている。

5日、安倍晋三首相は成長戦略第三弾を発表し、これにより成長戦略が出揃った形になった。しかし同日午後に東京株式市場の日経平均株価は急落し、前日の終値より約519円安い1万3014円で取引を終えた。この株価下落は、市場が安倍政権の成長戦略に疑問を抱いているという気持ちの表れということもできるだろう。

さらに今回の消費税転嫁法の成立は、安倍政権がこれから本気で増税を断行するという意思表示の表れであり、2014年に8%、2015年10月に10%に引き上げられる消費税増税で予想される消費の縮小に、より一層拍車をかけるものだろう。

安倍政権の発足以降、好調に思えてきたアベノミクスだったが、ここにきてその限界が少しずつ明らかになりつつある。(飯)

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