最近、「第四の矢」なる言葉が、新聞などで使われるようになりました。

これは5月28日に開かれた政府の経済財政諮問会議で、甘利明経済財政・再生相が、財政の健全化をアベノミクスの「第四の矢」と位置付けたことに由来します(29日付日本経済新聞等)。

アベノミクスとは、安倍政権の経済政策のことですが、「金融緩和」「財政出動」「成長戦略」の三つの経済政策を打ち出していたことから、「三本の矢」と表現されていました。

一番目の「金融緩和」については、日銀総裁が黒田東彦氏に交代してから、大胆で積極的な金融緩和を次々と打ち出したことで、景気回復の期待が高まり、株価も急上昇しました。

その手応えを感じたのか、最近になって、安倍政権では「財政の健全化」を訴える機会が増えています。5月28日の経済財政諮問会議でも、「成長戦略と財政健全化は両輪だ」という趣旨の議論がされていますし、その前日に麻生太郎財務相に提出された「財政制度等審議会」の報告書でも、財政健全化を訴えています。

財政健全化とは、要するに、「政府の借金が増えているから、増税が必要だ」という話です。

つまり、アベノミクスに新しい仲間が加わり、「金融緩和」「財政出動」「成長戦略」「増税」の四点セットになったと読み解くことができるわけです。

増税の内容は、消費税、所得税、相続税の増税です。

しかし、そんなことをすれば、従来の三本の矢である「金融緩和」「財政出動」「成長戦略」の効果をすべて打ち消してしまう可能性があります。

安倍政権では、「財政健全化を着実に進めることは、国民の将来不安を軽減し、消費が拡大することを通じて経済成長を促す」としています。とても不思議な主張です。

言い換えると「増税すれば消費が拡大する」と言っているからです。そんな馬鹿なことはあり得ないでしょう。

増税すれば、政府の懐は温かくなるかもしれませんが、取られた国民の懐は寂しくなります。どこの世界に懐が寂しくなることで、不安が軽減されて、さらに買い物をしようと考える人がいるのでしょうか?

増税という第四の矢は、国民に向けられた「毒矢」にほかなりません。これまでの三本の矢が成功しつつあるからといって、次に放つ矢も不況退治の矢と思って油断していると、大変なことになります。国民は、第四の矢については、毅然としてノーと言う必要があります。(村)

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2013年5月30日付本欄 経済成長と財政健全化の両立は困難 日本は世界経済のリーダーを目指せ

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2013年3月号記事 そもそモグラのそもそも解説 1.アベノミクスって何?

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