ローマ法王フランシスコが5月22日のミサで、「無神論者も、善行を行うならば、カソリック教徒と同程度に善人である」「あなたが何を信じようと、あるいは信じなくとも、主はキリストの血によって、我々すべてをお救いになった。カトリック信者のみならず、すべての人を。無神論者さえも」と語った。

法王は、キリスト教各派やユダヤ教、イスラム教などの他宗教・他宗派の聖職者との会見によって宗教間対話を推進する方針を表明し、すでに東方正教会のトップやエジプトのコプト正教会の法王との会談を実現させている。さらにバチカンと外交関係を持たない無神論国家である中国とも、対話や関係改善を進める用意があることまで表明しているが、今回のミサでは、個人の思想レベルで無神論者に救済の門戸を広げたことになる。

この発言は、ネット上でも世界中で議論を呼び、「無神論者や不可知論者でも天国に行けるのか?」という問いかけが相次いだため、翌日、法王庁の報道官が「救済の対象にならない人は誰もいない」という談話を発表すると共に、「法王には救済の本質についての神学的論争をあおる意図はなかった」と補足説明した。

法王は就任後、妊娠中絶反対の立場は堅持しているが、離婚や避妊、神父の妻帯を許すことや、同性婚について教会婚は許さないまでも、異性間の結婚と同様の法的地位を認める「シビル・ユニオン」は許容するのではないかとみられている。

確かに「分け隔てなく隣人を愛する」という姿勢は、イエスの教えに通じるように思われる。しかし、神仏の存在や、天国・地獄といったあの世があることを信じていなければ、死後、スムーズに天国に還ることが難しいのが霊的世界の現実だ。つまり、無神論者や唯物論者は、すぐさま神によって救済され、天国に迎え入れられることは難しい。

「貧しい者のための質素な教会」を目指す現ローマ法王は、世界の貧困問題を最重要課題としているが、無神論、唯物論をそのまま許容するならば、マルクスの共産主義思想と何ら変らはない。救済の門戸を無闇に広げるのではなく、やはりキリスト教の教えが現代社会に生きる人たちを本当に救えるのかどうかを考えなければならないだろう。(宮)

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