2013年7月号記事

参院選の争点になりつつある憲法改正を考えるにあたって、私たち国民は、政治の基礎となっている民主主義や人権思想について考えておく必要があります。それらをさかのぼると、実はすべて神仏にたどり着きます。異なる価値観が錯綜する現代において、宗教が政治にかかわる意義を問い直します。

(編集部 山下格史、長華子、只木友祐)

そもそも、「政教分離」なのだから、宗教が政治にかかわってはいけないのでは?と考える人もいるでしょう。

でも、それは誤解です。

政教分離の規定は本来、「政治から宗教を閉め出すこと」ではなく、「国家権力(政治)は、宗教に介入してはならない」と、宗教の側を守る意味で作られました。 戦前の日本で国家権力が国家神道以外の宗教を弾圧した反省を踏まえて、この規定が作られたことを見ても明らかです。

ですから、宗教が政党や政治団体を作って政治に参加することは、まったく問題ありません。

それは、学校の先生(日教組)や医者(日本医師会)などが、政治団体を作って国会に議員を送り込んでいることからも分かります。 もし、宗教だけに「結社の自由」が認められないなら、これはズバリ差別です。

ドイツのメルケル首相は宗教政党の党首

政治と宗教を切り離すことはできません。

たとえば、ドイツのメルケル首相は、キリスト教民主同盟という宗教政党の党首です。アメリカの大統領は就任式の際、聖書に手をおいて宣誓し、ロシアの大統領の就任式には、必ずロシア正教会の最高指導者が臨席します。また5月に、オランダの元首である新しい国王が誕生しましたが、即位宣誓は教会で行われました。

日本も例外ではありません。国会に指名された首相は、その後、天皇に任命されます(写真)。天皇は、日本神道の神主の長であり、宗教家です。

「そんなものは、形式的なものに過ぎない」という指摘もあるかもしれません。

でも 歴史上、近代の政治が確立を目指してきた生命・自由・幸福の追求といった基本的人権は、良心・信教の自由を求める運動から出てきた、という事実は押さえておくべきでしょう。