下村博文・文部科学相は21日、新型の小型ロケット「イプシロン」を8月22日に打ち上げると発表した。イプシロンは、JAXA(宇宙航空研究開発機構)とIHIエアロスペースが開発した国産ロケットで、小型の衛星を低コストで打ち上げることができる。

イプシロンは、打ち上げ費用の高さから2006年に廃止された固体燃料ロケット「MV(ミュー・ファイブ)」の後継機。鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられる。初回は、金星や火星を観測する衛星「スプリントA」を搭載する。今後、災害対応や農地の管理、海洋監視や科学探査のための小型衛星の打ち上げを担う予定だ。

イプシロンの特長は、何よりその打ち上げやすさにある。まず、打ち上げにかかる費用はこれまでの約半分の30億円台。打ち上げられる衛星の大きさでほぼ同規模のアメリカのロケット「ファルコン9」の40~50億円と比べても安い。そのため、人工衛星打ち上げビジネスで、日本の国際競争力を高められると期待されている。

また、イプシロンは機器の点検を自動で行えるため、パソコンを使えば世界のどこからでも打ち上げの管理ができる、世界初の「モバイル管制」を実現させた。さらに、これまで準備に1カ月以上かかっていたところ、1週間程度で準備できるため、急な打ち上げにも対応できる。「安くて、簡単で、早い」衛星打ち上げを可能にしたということだ。

政府は人工衛星打ち上げなどの「宇宙ビジネス」の分野を成長分野と定め、新興国からの衛星打ち上げ受注に力を入れている。17日に開発の方向性が発表された「H3」ロケットも、大型の人工衛星が安く打ち上げられるようになると期待されているものだ。日本が今後、本格的に宇宙ビジネスの分野で世界に勝っていくために、コストカットを進めることが重要なのは言うまでもない。

しかし、今後の日本の宇宙開発の方向性において気になるのは、「限られた予算をどうやって配分するか」という発想にならざるを得ないということである。財政難の中、宇宙開発分野には十分な予算が付いておらず、H3ロケットの約2000億円の開発予算の見通しも、不透明だという。官民ファンドの創設など、未来の成長産業に十分な投資が集まる仕組みを作っていくべきだ。(晴)

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