2011年2月号記事

§3 キリスト教とイスラム教

ひと目でわかる基礎知識

神話や文学の世界では、ライバルとして競い合う人間関係の原型は「兄弟」である。

最後のページの表にあるように、もともとキリスト教もイスラム教もユダヤ教から生まれた、共通点の多い、まさに兄弟のようによく似た宗教なのだ。

だからこそ競争し、時にぶつかるのかもしれない。

おもな共通点としては、どちらも中東に発祥し、共通の聖地もある。

共に唯一の人格神を信じる「一神教」であり、唯一絶対の教えが書かれた最高の啓典(『聖書』『コーラン』)を持つ「啓典宗教」である。

しかもイスラム教は、聖書の神とアッラーは同一であるという立場をとり、聖書の一部も聖典に含めている(キリスト教側はイスラム教の神との同一性を認めない)。

地域分布としては、キリスト教は北米・ヨーロッパ・南米などを合わせて22億以上の信者数を誇る。

イスラム教はアジアに10億以上、アフリカに4億以上の信者を有する。

ユダヤ教徒が1500万人程度であるのに比べれば、両宗教とも民族の枠を超えて広がった「世界宗教」だ。

何が民族の枠を超えさせたのかといえば、民族を問わず多くの人を導き救うことのできる普遍的な宗教原理だろう。

キリスト教は主なる神への愛と隣人愛を説き、イスラム教は神の下の平等と平和、寛容を重んじる。

両宗教のこうした普遍的な教えが、現世においては個人の行動指針や社会の維持原理として働き、さらには来世(天国)への希望を人々に与えてきた。

だが、「愛」や「平和」というユニバーサル(普遍的)な原理を含んでいるにもかかわらず、キリスト教世界とイスラム世界は千数百年以上も衝突を続けている。

その原因として、どちらの宗教にも「普遍的でないもの」が入り込んでおり、その部分がぶつかり合って火花を散らしている面がある。

ここが違う/意外な共通点も

(上から、信者数、主な宗派、成立時期・地域、成立過程、信仰対象、聖典、聖地、教義の特色、政治と宗教の関係、キリスト教からイスラム教を見ると……orイスラム教からキリスト教を見ると……)

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