日銀の黒田東彦新総裁は21日、就任記者会見を行った。黒田氏は、2年で2%の物価上昇率目標を達成するために「あらゆる手段を講じる」と表明。日銀のこれまでの政策を転換し、積極的な金融緩和を行う決意を語った。

量的緩和によるデフレ脱却への期待から、3月に入って日経平均株価は1万2千円を突破。市場の期待が高まっている。

一方で、この目標が達成可能かどうかも議論されている。麻生太郎財務相は22日の記者会見で、日銀の物価上昇率目標について言及。財政出動や成長戦略なしでは「かなりの時間がかかる」として、日銀だけでなく、政府の努力も必要との認識を示した。

物価を押し上げるには、供給以上に投資や消費の需要を高める必要がある。日本経済研究センターの試算によると、2年でインフレ率を2%にするには、2年続けて4%の実質経済成長が必要だという。しかし、自民党が2012年の衆院選で掲げた公約には、経済成長に関する政策について、「名目経済成長率で3%以上を目指す」とあり、これでは物価上昇率の目標を達成できない。

さらに自民党は、消費税増税を実施しようとしている。消費税率が上がると消費や投資が冷え込み、物価目標は達成できないだろう。政策自体がチグハグであるのだ。

一方、幸福実現党は大規模な成長産業への投資によって「名目7%成長」を目指すとしている。幸福実現党の経済政策と「アベノミクス」は方向性が似ているが、経済成長の目標が低ければ、2%のインフレ目標は達成できないのである。

やはり景気回復には、国家の大きな成長ビジョンが不可欠だ。単なる公共投資にとどまらず、宇宙開発やリニア新幹線の建設前倒しなどに国家プロジェクトとして取り組み、投資すべきだ。政府は、現在の景気対策だけでなく、将来の新産業を生み出すことも考えるべきである。(晴)

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