国際取引価格の上昇や円安の影響で鉄鋼石や石炭など鉄鋼製品の原料コストが上昇しており、鋼材価格が上昇すると予想されている。さらに、原発停止に伴う電気料金の値上げも鋼材価格を押し上げるとの指摘がある。

日本の粗鋼生産量の2割は電炉メーカーが生産している。電炉メーカーは、鉄スクラップを溶かして鋼材をつくる。資源の少ない日本にとって、原料を自国で調達できるのはメリットだが、大量の電気を使うため、電気料金の値上げは、鋼材コストに大打撃を与える。しかし、中国や韓国の安価な鋼材との競合から、コスト増を価格に転嫁するのも難しい状況だ。

ほとんどの原発が停止している現在、発電の大部分は火力発電所が担う。火力発電は燃料に石油や天然ガスを使うため、発電コストは原子力よりも高くなる。さらに追い打ちをかけるように、燃料価格が円安の影響で上昇傾向にあるため、さらなる電気料金の値上げにつながる。

だが、アベノミクスの目玉の一つである金融緩和により、円安になるのは見込まれていたことだ。ならば、円安による燃料価格や原料価格の上昇とバランスを取るためにも、原発再稼働を早期に実現しなければならない。

しかし、原発再稼働の見通しはまだ立たない。安倍首相は、2月28日の施政方針演説で「安全性を確認できた原発から再稼働」という方針を表明したにもかかわらず、原子力規制委員会は4日、各原発が設置している防潮堤の直下に活断層がないかどうか調査する方針を示した。この調査により、再稼働はさらに先延ばしになることだろう。まさにアベノミクスの後ろから矢を射るようなものだ。

鉄鋼製品の価格が上がれば、他の業界にも影響する。たとえば建設業界は、アベノミクスで公共事業の増加に期待を寄せているが、鉄筋などの資材価格が上がれば打撃を受けるだろう。

アベノミクスで景気回復という「アクセル」を踏む一方で、電気料金の値上げは大きな「ブレーキ」だ。日本経済がエンストしてしまう前に、原発を再稼働するべきである。(晴)

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