25日の自民党役員会で、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への交渉参加を含めた判断の時期を、安倍晋三首相に一任することを了承した。26日付各紙で報じている。

「TPPに参加するかしないかの判断の時期は私に任せてほしい。判断にあたり、農業、農村の実情を最も知っている自民党の判断を聞いて判断する」と述べ、出席者から異論は出なかった。

TPPは、輸入の際に掛けられる関税の撤廃だけでなく、知的財産など自由貿易協定のすべてをカバーし、経済的な国境をなくすことを主柱としている。参加国は現在、北米、南米、豪州、東南アジアの9カ国となっている。中国ははじめから拒否されており、韓国は参加することはほぼないとしている。

TPPの話が出ると決まって浮上するのが「農業が壊滅する」という反対文句だ。

反対派いわく、「安い海外産の農作物が入ってくれば、高い国産品はまったく買われず、結果として雇用が失われる」。

しかし、こうした反対意見の根拠となる統計にはありえない想定が含まれている。コメや小麦などの関税撤廃をTPP参加国だけでなく全世界相手に撤廃するという想定となっていることだ。

この想定の根拠となる農林水産省の試算ではコメの国内生産の9割が海外産のコメに代わるということになっている。9割とは約700万トンにあたる。だが、アメリカで生産されている「ジャポニカ米(日本人が主食として食べている品種)」は30万トンに過ぎない。増産しても100万トン程度と試算されている。さらにコメは関税をかけないという例外規定を今後の交渉を勝ち取ることも可能だ。

しかもTPPには中国は参加しない点を加味すると、海外には700万トンの「ジャポニカ米」は存在しない。

雇用が失われるという意見もある。しかし、日本の農家のほとんどは兼業農家で、収入のほとんどは製造業と年金によっているのが実情だ。

歴史的に見ても、1990年代にコメ市場が一部開放した時も、やはり「農業が壊滅する」と騒がれた。しかし、実際には壊滅せずに、すみ分けを図って生き残って来た。

また、意外と知られていないのは、野菜の関税は平均して3%程度と低いにもかかわらず、生き残っている。日本の農作物は海外で人気が高く、中国やシンガポール、マレーシア、チリなどでは富裕層が高額にもかかわらず購入しているほどだ。TPP参加によって「日本ブランド」がさらに振興するのは間違いない。

世界のリーダーとなるべき日本がアジア太平洋の秩序作りであるTPPに参加しないわけにはいかない。日本の農業は保護されるほど弱くないのだ。むしろ絶好のチャンスとなり、停滞している日本の空気に良い刺激を与えることになるだろう。(悠)

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