アルジェリアで武装組織が天然ガス・プラントを襲撃し、人質を拘束している事件で、プラントを包囲したアルジェリア軍は17日、人質救出作戦を強行した。拘束されていた多数が解放されたが、35人の人質が殺害されたという情報もある。18日夜の段階で、日本人7人の生存が確認されたが10人は安否不明。現地からの情報は錯そうしている。

タイを訪問中の安倍晋三首相は「こうした行為は断じて許すことはできない」と述べている。その一方で、アルジェリアのセラル首相に電話を入れ、「人命最優先での対応を申し入れている。人質を危険にさらす行動は、厳に控えていただきたい」と要請。対するセラル首相は、「危険なテロ集団が相手。これが最善の方法だ」と述べた。

テロ行為に対する「国際正義」の感覚において、日本と諸外国との間に隔たりがあることが、今回の事件への対応で見えてきた。

アルジェリア軍はテロ組織を容赦なく鎮圧することで知られる。今回の作戦も人質の出身国政府に事前通告をしないまま行われたことで、日米欧の政府関係者は不信感を露わにした。キャメロン英首相は「アルジェリアは、我々が事前に通告して欲しかったと、知っているはずだ」と語っている。ただ、鎮圧作戦自体に異を唱えたわけではない。

しかし人質の救助は優先されるべきであるとしても、テロリストに屈して正義を曲げていいということにはならないのは国際社会の通理だ。正義は正義として押し通し、テロを根絶するための取り組みは続けられるべきものである。クリントン米国務長官は17日、「今回の事件が終わったら、我々はイスラム・マグレブ諸国のアルカイダと戦い、叩き潰すためにできる限りの手を尽くす」と述べている。

今回の事件の犯人は、隣国マリで武装組織掃討作戦を行っているフランスへの報復を動機としているが、フランスはアルジェリアでの事件にかかわらずマリでの作戦を継続。EUも側面支援にあたることを明らかにしている。

マリを含むアフリカでのテロ問題に対する日本国内の関心は薄いが、これまでにも日本は、テロと戦ったり、国際的な正義を守るという観点に無関心できた。例えば、1977年に日航機が日本赤軍にハイジャックされた時には、当時の福田赳夫首相が「人命は地球より重い」という“名言"を残して、身代金の支払いなど犯人の要求を丸呑み。「日本はテロまで輸出するのか」と批判された。

安倍首相は海外で「右翼」と批判されることがあるが、実は日本の一国平和主義に毒されてしまっているようだ。

人命最優先でテロリストに譲歩すれば、さらに大きな犠牲を払わなければならなくなるのは明らかだ。犠牲者の尊い命を無駄にしないためにも、日本一国の利益だけではなく、「国際正義」を安倍首相と日本政府は考えなければならない。

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