公立学校で実施されている「完全学校週5日制」について、文部科学省がこれを見直し、土曜日にも授業を行う「6日制」導入の検討を始めることを、13日付毎日新聞が1面で報じた。「ゆとり教育」で子供の学力が低下したことに対する反省と言え、国際競争に勝ち抜く人材を輩出するためにも、この動きは歓迎したい。

記事によると、現在の省令でも、「特別な必要がある場合」は授業ができることになっているが、土曜日に授業を行っている学校でも年10回以下がほとんどという。また、東京都小学校PTA協議会が2010年に実施した調査では、土曜日の授業実施について、保護者の86%と教員の38%が「必要」、保護者の7%と教員の52%が「反対」だった。保護者はやってほしいが、教員はやりたくないという構図だ。

だが、2010年度の調査で、公立中学校に子供を通わせる家庭で、塾や家庭教師などに支払う金額の平均は年22万9千円という結果が出た。多くの家庭が、学校の勉強だけでは満足できないという現状が浮き彫りになっている。国民の税金で運営する公立校が役割を果たせていない。

また、15歳を対象に行われる国際学習到達度調査(PISA)を見ても、日本は2000年から06年にかけて、数学が1位から10位、科学が2位から6位、読解力が8位から15位と大幅に順位を落としている。09年は数学が9位、科学が5位、読解力が8位とやや盛り返したものの、地域として初参加した「上海」が全分野で1位、三冠王に輝いたことを考えれば喜べる状況にはない。

現在、教育現場はいじめや体罰、自殺など問題が山積しており、今後、土曜授業を進めるにあたっては、日教組あたりから「教師の負担が増えるからやめろ」「負担を増やすなら教員や給料を増やせ」などの声が沸き起こることも予想される。

だが、そもそも子供の学力向上という成果、お客様である保護者の満足を生み出せていない"不採算部門"に、安易に人やお金を注ぎ込むことには慎重になるべきだろう。民間企業や塾であれば、まずそこで働く人々が、今までの働き方や考え方を見直し、もう一段の努力や工夫を行うのが筋である。

「教師は労働者である」という左翼的な考え方をすれば、教員増や賃上げ要求ということになるだろう。だが、教育界は今一度、「教師は聖職者である」という原点に立ち返り、自らの仕事を見直すとともに、奉仕や慈悲の精神でこの国の将来を支える子供たちの教育に取り組んでもらいたい。(格)

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2013年1月10日付本欄 体罰を受けた高2生徒の自殺 教育界に善悪の価値判断が必要

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2010年2月号記事 日本の教育で国際社会を生き残れるか ~熾烈な海外の教育事情~

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=878